第33話 ナザリックの方針

ウルは、モモンガとデミウルゴスと共に青空を拝んだ後、再び玉座の間に向かった。


目的は、モモンガと共に話し合ったこの世界の情勢の説明と、売るの現在の立場、そして今後のナザリックの方針を階層守護者に伝えることであった。


階層守護者に加えて、セバスの姿もあった。


伝えるべきことをすべて伝えたモモンガは、ウルと共に転移でその場を後にする。


支配者の姿が見えなくなったことで、守護者たちは体勢を戻し、立ち上がる。


「まさかあのようにお考えとは…」


「ええ、私はお二方のお考えに気付けずに、無能なご提案をした自分を恥じております」


「…?それは一体どういうことかしら?」


アルベドは、自身が呟いた言葉に対し、デミウルゴスから予想外の質問が帰ってきたことに純粋な疑問をもった。


デミウルゴスは、先ほどモモンガとウルベノムと共に、ナザリック上空で話をしたこと打ち明けた。


支配者であるモモンガと、その友人であるウルベノムと共に行動し、剰え会話もしたとなれば、他の守護者たちが羨ましがるのも無理はない。


それどころか、アルベドに至っては酷く嫉妬している様子が伺えた。


「アインズ様は、この世界を見てこう仰られておりました…。『この世界で平和を実現するのも悪くない』と…。そして、続けてウルベノム様が『友に誇れる世界にしたい』とね」


それを聞いた階層守護者は、何事かと頭を悩ませる。


そんな中で、アルベドだけは理解したように口を開いた。


「なるほど…そのようなお考えが…」


アルベドの発言に、他の守護者たちは焦りを見せる。


「ど、どういうことでありんすか?」


「ゼヒトモオシエテモライタイ…」


シャルティアとコキュートスは、すがる様にアルベドに言い寄る。


「一言でいえば…そうね。『平和的な世界征服』…と言ったところかしら?」


「平和的な…つまり、戦って征服はしないってこと?」


「そ、それって、無理やり征服することと何が違うのかな…?」


「結果は変わりんせんでありんすよね?」


アルベドの言葉を正しく理解できず、アウラ、マーレ、シャルティアは酷く困惑して見せる。


「…セバス、あなたにならわかるのではないかしら?」


アルベドは、このナザリックでも数少ない善人者に問うてみる。


「大方は理解ができていると考えております…。そうですね…。アインズ様のお考えの一端を理解する鍵となるのは、ウルベノム様の『友に誇れる世界』であると思われます」


セバスの言葉に、デミウルゴスはニヤッと笑みを浮かべる。


「流石だね…セバス」


「デミウルゴス様…。ありがとうございます」


セバスは、形式的に頭を下げる。


「…スマナイ…ワタシデハリカイガオヨバナイヨウダ…」


「そうだね…。であれば一つずつかみ砕いて話しをさせてもらうよ…」


デミウルゴスは、一呼吸おいてから仰々しく口を開く。


「まず、ウルベノム様の言う『友』…それは、ウルベノム様の所属されていたギルドのお仲間たちであることはまず間違いないだろう。だが、決してそれだけではない。その友の中には、アインズ様を始め、至高の41人の御方々も含まれている…。ここまではいいかね?」


デミウルゴスは、理解していないであろう守護者たちに目配りをし、異論がないことを確認すると、続けて口を開く。


「そして、『誇れる世界』これがとても重要になってくる。さて、ここで質問なのだが、『力で支配した結果、荒廃してしまった世界』と、『平和的に支配した結果、活気に満ち溢れた世界』…今お隠れになっていらっしゃる御方々がお戻りになられた際、一体どちらを望むと思うかね…?」


デミウルゴスの言葉に、その場にいる全てのモノが理解したという様子で目を見開いた。


「つまり、アインズ様の目指す『世界平和』と、ウルベノム様が目指す『友に誇れる世界』とは、可能な限り外の世界と友好的な関係を築くことに留まらず、将来的には向こうから自発的に従属を望むようにさせる、という意味なのだと私は理解しているよ」


「マ、マサカソコマデノコトヲオカンガエダッタトハ…」


「…ええ、さすがはアインズ様…。至高の41人をおまとめになられていたその知略には、驚きの連続です…。そして、そのアインズ様のお言葉を、我々でも理解できるようにかみ砕いてくださるウルベノム様にも、敬意を表せざるを得ません」


デミウルゴスは、酷く感動したようにして天を仰ぐ。


「そうね…。我々にも理解できるようなお言葉でお伝えすると言うことは、つまり、ウルベノム様にはアインズ様のお考えがお分かりになっているという証拠ですから…」


「や、やっぱりすごいね…お姉ちゃん」


「ほんと…アインズ様達、至高の御方々が友だとお認めになられているのがわかった気がする…」


「強さだけでなく、アインズ様と同等の頭脳をお持ちということでありんすかえ…」


マーレ、アウラ、シャルティアが感銘を受けたように口を開いた。


その後、暫く沈黙が流れた後、アルベドが締めるようにして口を開いた。


「皆、理解したようね…。今後、ナザリックにおける我々の使命は、できる限り外部との友好的な関係性を構築し、平和的な世界征服を行うことで、この世界をアインズ様とウルベノム様にお渡しすることにあるわ!」





さて、以上のことから、アインズとウルベノムの呟きから、階層守護者引いてはそれを聞いたナザリックの全ての僕の中で、盛大な勘違いが生まれてしまう。


不幸中の幸いだったのが、世界征服とはいえ、『友好的且つ平和的』という点であったことだが、『あんまり敵とか作らないでいきたいね~』というくらいにしか考えていなかった2人からしてみれば、酷い誤解である。


そんな2人はそんなこととは露知らず、食堂でパンパンになった腹を擦っていたのであった。


『至高の御身やそのご友人が食事をとられるような場所ではございません!』という一般メイドの言葉を跳ね除け、リアルでは決して口にすることができなかった美食を片っ端から口に運び、食事の楽しさを髄まで味わいつくしていた…!


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