第2話 襖の隙間から
近隣のビルの屋上看板の光がレースのカーテン越しに6畳の部屋をうっすらと照らしている。それとは反対方向の一条の光は、襖の隙間から覗いている一樹がいるリビングからだ。緊張する亮介と綾乃は、立って抱擁したままほとんど動けないでいる。呼吸が荒いのは興奮しているからではない。
理由は違えど、それは一樹も同じだった。望み通りの展開になったのはいいのだが、実際に体験してみると、深呼吸はおろかうまく息を吸うこともままならない。後悔のような念も胃の底あたりにじんわりと滲んでくる。
本当にこれでいいのだろうか。止めるなら今か? 綾乃が本気になったらどうする?
冷静だったはずの自分と、今の自分との
一樹にとってこういう事態は何年ぶりだろうか。業務では入念な資料作成と綿密な調査を行い、客観的な視点でインサイトを導き出すと、あとは一気呵成に顧客の課題解決に
ところが今は違う。想定外どころではない。慢心。想像力の欠如――。様々な思いを巡らせたのち、顔を上げて声をかけようとした一樹の目に、二人のキスが飛び込んできた。
「……ん……」
いつもより低い綾乃の声が
唇同士が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます