未来予知みたいなこと言う女子が(仮)彼女になりました
青キング(Aoking)
プロローグ
あっ。
夕ごはんの準備が出来たからお祖父ちゃんを呼んできて、とお母さんに頼まれておじいちゃんを探したら庭テラスの椅子に座って夕焼けの空を見ている。
何か見えるのかな?
後ろからお祖父ちゃんに近づく。
「お祖父ちゃん」
後ろまで来て声をかけた。
わたしの声に気が付いてお祖父ちゃんはゆっくりと振り返ってくれる。
「どうしたの?」
「夕ご飯できたからお祖父ちゃん呼んできて、ってお母さんに言われた」
「そうかい。ちょっとしたら行くって言っておいて」
お祖父ちゃんは答えて微笑んだ。
わたしから顔を逸らして、また夕焼けの空を見上げる。
何が見えるのか気になる。
「さっきから何を見てるの、お祖父ちゃん」
「……何も見ていないよ」
そんな答えはおかしいと思った。
何かがあるから空を見ているはずだから。
「空に何か見えるの?」
「……お祖母ちゃんのことを考えていたんだよ」
「お祖母ちゃん?」
「……そう」
「お祖父ちゃんのお祖母ちゃん?」
わたしは自分のお祖母ちゃんに会ったことがない。
だから、お祖父ちゃんはわたしのお祖母ちゃんじゃないお祖母ちゃんの事を言っているんだ。
「……違うよ」
「違うの? じゃあ、わたしのお祖母ちゃん?」
「……そう」
わたしに頷く。
お祖父ちゃんならわたしのお祖母ちゃんのことを知ってるんだ。
お祖母ちゃんの事、聞いてみようかな?
「ねえ、お祖父ちゃん」
「なんだい?」
「どうして、わたしにはお祖母ちゃんがいないの?」
「コラ。夕ご飯冷めるわよ」
わたしが聞いたと同じ時に、お母さんの注意する声が横から入ってきた。
お母さんの声がした方を振り向くと、服の上にエプロンをつけたお母さんが部屋とテラスの間に立って怒る時の目でわたしを見ていた。
「おじいちゃんを呼ぶだけでいいの。おばあちゃんのことは聞いちゃいけません」
「えー」
「えー、じゃないの。ほら、夕ご飯冷めちゃったら美味しくないわよ」
言うこと聞かせよう、とする時のお母さんの目だ。
だって、お祖母ちゃんの事知りたいもん。
「どうして、お祖母ちゃんの事を聞いちゃダメなの?」
「どうしてって……」
「ねえ、どうして?」
わたしが諦めずに尋ねると、お母さんは言おうか迷っているのか目を伏せた。
でもすぐに目を上げて、わたしが見たことないようなイライラを見せる
「あなたのお祖母ちゃんはね、お爺ちゃんの事を捨てて勝手に家を出ていった悪い女なの」
「悪い女?」
「そう。悪い女なの」
悪い女って、どんな女なんだろう。
頭の中でいろんな絵本で見た悪い女の姿が浮かび上がる。
「魔女みたいに悪いの?」
「そうね。それぐらい悪いかもね」
「悪い女じゃない」
お母さんがわたしの想像に頷いた後、お祖父ちゃんが違うというように首を横に振りながら言った。
けれど、お祖父ちゃんは言葉を続けずに黙ってしまった。
「お祖父ちゃん?」
心配になって顔を覗き込んだ。
見たことないぐらいにションボリしているように見える。
「お祖父ちゃん、悲しいの?」
「ほら、お祖父ちゃんが悲しむからお祖母ちゃんの事は聞いちゃダメなの」
お花を摘むと枯れちゃうことを教えた時みたいに、お母さんがわたしの肩に手を置いて言った。
「お祖父ちゃんのこと、大好きでしょ?」
「うん。大好き」
お母さんとお父さんに怒られたときも、優しいお祖父ちゃんだけはわたしの味方になってくれる。
お話ししたいときはいつも話を聞いてくれる。
そんな優しいお祖父ちゃんがわたしは大好き。
「大好きなお祖父ちゃんを悲しませたくないでしょ?」
「うん」
「それじゃ、お祖母ちゃんの事を聞くのはやめようね」
「わかった」
お母さんの言うことに正しいと思った。
お祖父ちゃんの悲しい顔は見たくないから。
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