第二話: 放課後の約束
その日、夕焼けが空を鮮やかに染め上げ、由紀の心も高揚感でいっぱいだった。蓮と一緒に過ごしたあの瞬間が、まるで夢の中の出来事のように感じられる。彼の言葉が耳に残り、心に温かい光を灯していた。「これからも一緒にいたいと思ってるんだ」と告げられたとき、彼の真剣な眼差しが今でも忘れられない。
帰り道、由紀は友達と一緒に歩きながらも、彼のことが頭から離れなかった。美咲が楽しそうに話す声が耳に入らないほど、彼とのやり取りが脳裏にこびりついている。「由紀、どうしたの?考え事?」美咲が不思議そうに尋ねてきた。
「うん、ちょっと…」由紀は言葉を濁し、思わず頬が赤くなる。美咲はその様子に気づき、「もしかして、あの蓮くんと何かあったの?」と続けた。
心の中で彼との時間を振り返りながら、由紀はついに美咲に打ち明ける決心をした。「そうなの。放課後、少し話してたんだけど…彼が『これからも一緒にいたい』って言ったの。」
その瞬間、美咲の目がキラリと輝いた。「えっ、すごい!それって、いいことじゃん!由紀、もしかして、恋に落ちたの?」
由紀は恥ずかしさと嬉しさで顔を赤らめ、首をかしげる。「まだ、何もわからない。ただ…彼といると、楽しいなって思う。」
美咲はニヤニヤしながら、「それなら、次は彼を誘ってみれば?放課後の時間をもっと増やしていけば、自然と仲良くなれるよ!」とアドバイスしてくれた。由紀はその言葉に励まされ、自分の気持ちを整理することにした。
翌日、教室に着くと、由紀は心の中に少しの期待を抱いていた。蓮の姿を探すが、教室には彼の姿が見当たらない。ふとした瞬間、彼が現れると、心臓がドキリとした。彼の笑顔はいつもより少し柔らかく、由紀に向けられた視線が心を温める。
授業が始まると、蓮は集中した表情で教科書を読み上げ、由紀は彼の後ろからその姿を見つめていた。彼の背中から漂う穏やかな雰囲気に、安心感を覚える。蓮が時折振り返るたびに、彼女の心は高鳴り、まるで甘い蜜に誘われるようだった。
授業が終わると、由紀は思い切って蓮に声をかけた。「ねえ、放課後、少し話さない?」蓮は驚いた表情を浮かべたが、すぐに優しい笑みを浮かべて頷いた。
「いいよ。どこで話す?」彼の問いに、由紀は少し考え、学校の裏にある小道を提案した。周りには静かな環境が広がり、二人だけの時間を持つのにぴったりだと思った。
放課後、由紀はドキドキしながら待ち合わせの場所へ向かう。心の中には期待と不安が入り混じり、足元がふわふわとした感覚に包まれている。小道にたどり着くと、蓮がすでに待っていた。彼は、静かな夕暮れの中で背を伸ばし、心を落ち着けるように深呼吸をしていた。
「遅れてごめん」と言いながら、由紀は少し恥ずかしさを感じる。蓮はにっこりと微笑んで、「大丈夫。待っている間、色々なことを考えてたよ」と答えた。その言葉に、彼も同じ気持ちを抱いているのではないかと、由紀の心が少し軽くなる。
二人は並んで小道を歩き始め、静かな会話が続く。夕日の光が二人の影を長く伸ばし、彼らの心の距離を少しずつ縮めていく。
「由紀は最近、どんな本を読んでるの?」蓮が尋ねる。由紀は嬉しさを感じながら、自分の好きな作家や本の話を始めた。彼と共通の話題を見つけることで、心がますます弾む。
「私は、最近恋愛小説を読んだんだけど、その中で『真実の愛』について描かれていて…」由紀は自分の思いを語ると、蓮は真剣に聞いてくれた。その瞳の中にある温かさに、由紀は勇気をもらい、心の内側をさらけ出すことができた。
「僕も恋愛に興味があるんだ。人の気持ちがどう動くのか、すごく不思議だよね」と蓮が言った。彼の言葉には、彼自身の体験が感じられ、由紀はその裏に隠された何かを感じた。蓮が語る言葉には、少しの寂しさが混じっているように思えた。
「そうだね。恋愛って、楽しいこともあるけど、時には傷つくこともあるから…」由紀が言うと、蓮は静かに頷いた。彼の表情は少し暗くなり、何かを思い出しているようだった。
そのとき、由紀は彼の気持ちに寄り添いたいと思った。「蓮、もし何かあったら、いつでも話してね。私もあなたの話を聞きたい。」
蓮はしばらく黙って考え込んでいたが、やがて顔を上げ、「ありがとう。君がそう言ってくれると、すごく心強いよ」と言った。彼の言葉には、少しの温もりが宿っていた。
その瞬間、由紀は彼の気持ちに触れたように思えた。彼には何か深い悩みがあるのかもしれない。そのことに気づくと、由紀は彼に対して一層の関心を抱くようになった。
しばらくの沈黙が流れた後、蓮が口を開いた。「由紀、これからも一緒にいられるなら、嬉しいな。君といる時間が、僕にとって特別なんだ。」
その言葉に、由紀の心は満たされる。彼の想いが自分に向けられていると実感し、嬉しさと感動で胸がいっぱいになった。「私も、蓮といる時間が特別だよ。」
二人はその言葉を交わしながら、小道の終わりにたどり着いた。夕暮れの空が一層美しく、彼らの未来がどうなるのか、希望に満ちた気持ちが膨らんでいく。心の中に湧き上がる感情を抱えつつ、二人は少しずつ心の距離を縮めていくのだった。
その日、由紀は蓮と過ごした特別な時間が、これからの彼らの関係において大きな意味を持つことを確信した。彼との放課後の約束は、まるで新しいページをめくるかのように、二人の未来を導いていく。由紀の心には、彼との新たな物語が待っていると感じられた。
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