壊された日常
3
アスファルトに散った桃色の絨毯の上をお気に入りの春ブーツで歩く。
今年はお花見できなかったなぁ、なんて思い耽って葉桜になりかけている木を見上げた。
「うめー」
講堂の奥から声が聞こえ振り返ると、視線の先には重そうな紙袋を両手いっぱいにした綾ちゃんがいた。
「お待たせ…って、うめ荷物それだけ?少なくない!?」
「そう?私のところはこれぐらいだったよ。綾ちゃんの学部が多いんじゃない?」
「えぇー、何それ。ずるーい」
どうやら綾ちゃんの学部が最後だったようで辺りには彼女と同じように重そうな紙袋を持っている人たちが大勢いる。
あからさまに肩を落としてうんざりする綾ちゃんに苦笑いを返すと、羨ましそうな視線を私の荷物へと寄越していた。
「それより、早くガーデンカフェいこ。席埋まっちゃう」
「そーじゃん。うめ!急ごっ!」
「あ、ちょっと」
そういうや否や、腕時計で時間を確認すると私よりも数段歩きずらいであろうヒールの靴で、綾ちゃんが一気に駆け出す。
楽しそうに笑いながら走る姿を見て、私も笑いながら後を追った。
綾ちゃんとは数日前、大学の入学式で知り合い私が構内で迷っていたところに声をかけてくれたのがきっかけだった。
本来ならば入学式は大学が所有するアリーナホール会場のはずだったが、新築改装ということで大学の記念講堂で開催されたのだ。
方向音痴ではなかったはずだけど、オープンキャンパスで何度か見学に来ただけだったし、おまけに大勢の人、人、人…。そんな人波にもまれ、気づけば私は全く知らない場所で立ちすくしていた。
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