第33話

「颯さんのお父様とお母様が、たくさん颯さんに愛を伝えたからなんですね」



「百合ちゃん‥」



お袋の目はいつのまにか潤んでいた。



「たくさんの愛に囲まれて育ってきたから颯さんは愛を伝えることが“普通”なんだと思いました。


だから、その‥うまく言えないんですけど、たくさんの愛を颯さんが伝えてくれて今の私の幸せがあるんです。


颯さんをそんな風に育ててくれて、私に出会うチャンスをくれて、ありがとうございます」




百合の飾らない素直な言葉。



フッ、やっぱりお前は…



「最高だろ?俺の嫁」



「颯‥?百合ちゃんを選んだことが颯の最高の親孝行ね」



隣にいる百合を抱き寄せ頭を撫でると、恥ずかしそうに‥でもとても幸せそうに笑っていた。



「じゃあ婚姻の日取りなんだが‥」




今度こそ本題に入ろうとした時、胸ポケットが振動した。

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