第10話
(颯side)
「颯‥私、颯のこと全然知らなかった‥」
ある日、風呂から上がると涙目でリビングのソファーに座っている百合がいた。
「‥百合?」
声をかけても百合の目はそれから逸らされなかった。
「ごめんなさい‥片付けしてたら」
百合の目の先にはテーブルに置かれた俺の免許証。
今日書類を作るのに使って、そのまま置きっ放しにしたのを忘れていた。
でも‥
「どうした?」
百合に優しく聞くように、俺も隣に腰掛けると百合を包むように抱きしめた。
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