第149話

なんとか落ちつきプライベートルームへ帰れば、透さんに次の診察の予定を聞かれた。



もちろん次なんて無い。


予約の話だって出なかった。




なのに私はまた嘘を重ねた。




また来週、図書館に行って調べたい。まだ信じたくない自分がいる。



「百合…不安か?」



俯いた時、私の手を握って私の顔を覗き込むように視界に入ってきたのは颯だった。



今すぐに抱きつきたい。



あなたの子どもはいない、これからもできないということを伝えたい。でもそれを言えば、私は子どものようにあなたに泣きつくだろう。そんな私をきっと、絶対颯は優しく抱きしめてくれる。




でも…それじゃあ颯の悲しい気持ちは誰が受け止めるの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る