第92話

そう言って私の腰に手を添え、強制的にプラべートルームへ帰ろうとしたときだった。



「わ、若!!

これからも俺が、俺が作ったもの食べてくれますか?」



緊張気味に、それでも大きな声で颯にそう聞く直樹君の声がした。隣を見上げれば振り返りもしない颯。でも…



「お前の作ったものしか食う物ねぇだろーが」



とてもぶっきらぼうな声に言葉。振り返れないけど、直樹君が今どんな顔をしてるか、手に取るように分かった。そして颯も。



「ふふ…」


「行くぞ」


少し乱暴に私の腰を引く手。それでも私はこの人に、颯に安心して身を任せた。

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