第56話

乗り込んだエレベーター。扉を閉めればすぐに壁に百合を押し付け抑えられないキスをした。



「んっ!は、はや…て、んっ、…んっ」



それは百合に対しての怒り。



何で俺がいるのに無理をする?


何をそんなに隠すんだ?


俺にまで嘘の笑顔を向けなくていい!!



ぶつけるかのように激しいキスをした。今百合に伝えても、絶対に心が弱っている百合をさらに傷つけるだけ。百合自身に気づいてもらわねぇと意味が無い。



キスで…キスで全てが伝われば、こんなに苦しい想いはしなくていいのか?



こんなくだらねぇことを考えるぐらい、最上階に着いても尚、俺は百合へのキスを止めることが出来なかった。

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