心の名

TatsuB

第1話 名

「私の世界は、今、戦争の中にある。」


私は国の徴兵命令を受け、軍人として戦場に立っている。

戦争がどのようにして始まったのか、それを知る術もなければ、知りたいとも思わない。つい最近まで、平凡な日常を送っていた私にとって、戦争の背景など理解できるはずもない。ただ、今わかるのは、この戦争で多くの命が無惨に失われ続けているということだけだ。


人々は、自分がなぜ生きているのか、そんなことを考えた人はたくさんいるだろう。

たとえ戦争がなくとも、世界のどこかで飢えに苦しみ、命を落とす者がいる。理不尽に殺される者もいるだろう。それでも、多くの人が今日という日を生き続けているのだ。


「もし神がいるなら、それは全知全能ではないはずだ。」


ある噂を聞いたことがある。悪魔は、人を欺くために、神よりも神々しい姿をしているという。

だから、もしこの戦時中に神に祈っている人がいるのなら、それは神ではなく、悪魔にすがっているのかもしれないとさえ思う。


「「神」に祈っていた戦友は、もうこの世にはいない。」


だが、私は彼の名前を忘れない。

それが私にできる、彼への弔いだろう。彼は国のために命を捧げたのだから、その名が少しでも誰かの記憶に残ることは、報いになるはずだ。


我々軍人は、国のために命を懸けて戦っている。だが、戦いの中で、多くの人が名も残さず、誰にも知られずに死んでいく。それが、敵であろうと味方であろうと、私はただ悲しい。

魚は「一尾」

鳥は「一羽」

馬は「一頭」

このように数える。これは死んだときに何が残るかによって数えられる。

しかし、人間はどうだろうか?


「人は『一名』。」


そう人は名が残るのだ。

だからこそ、私は自分の名も、他人の名も大切にしていきたい。味方であれ、敵であれ、それぞれが自分の正義のために命を懸けている。

その命が何の意味もなく消えていくことは、とても悲しい。


「私は、最期の瞬間まで自分の名に恥じない生き方をしたい。」


それが私の願いだ。どんなに過酷な戦場でも、誇りを持って自分の道を歩みたいと思う。

今、私は敵陣へと向かう。

しかし、その前に、私が願っていることを伝えたい。皆さんが、自分の生き方を全うできることを、私は心から望んでいる。


もし、世界に平和が訪れたなら。

終わりの見えない人生の中でも、きっと自由な選択ができるはずだ。たとえ時間が有限であっても、誰もが自分の速度で、自分のやり方で生きていけばいい。そして、自分の「名」に恥じない生き方を学んでほしい。


それでは、私はいってきます。

自分の名に恥じない生き方を...

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