第49話

「お疲れー!」




『ありがとうございましたー』




「お疲れ様です!」




無事にクリスマスライブを終え、メンバーやスタッフさんとハイタッチをしながら楽屋へ向かう。




途中で夕さんからタオルを受け取るけど、目が合うことはなく…




終演後に時間くださいって、昨日メッセ送ったけど、ちゃんと届いてるのかな…?




「はぁーっ!これで今年のライブあと1回か~」




「ワンマンはこれでラストだよ」




『ほんとだね~。年越しイベントも楽しみだね』




「明後日セトリ決めるんだよな。考えとこうー」




楽屋で4人だけの空間になると、それぞれのスイッチが切れていく。




体力オバケの快は走り回ってるし、万緒くんは会話に入りつつもテキパキと帰り支度をしている。




深繰くんはさっそくスマホを取り出してSNSを更新している様子。




僕はというと、帰り支度をするフリをして、楽屋の開いたままの入り口を見ては、夕さんが通らないか確認している。




チーフマネというのは、相当忙しいらしい。




今もスタッフさんに挨拶周りや、段取りの説明をしているのだろう。




「皆さんお疲れ様です!タクシー呼んでますので、準備できた方から裏口どうぞー」




「じゃ、お疲れ」




「万緒おつかれー!」




「万緒くんばい!」




『お疲れさまー。あ、ねぇ田中さん』




楽屋を1番目に訪れた新人マネージャー、田中さんを呼びとめる。




「僕ですか?どうしました?」




『あ、えっと、…夕さん今どんな感じなのかなって…』




万緒くんが通り過ぎていったのを確認し、楽屋の中に聞こえないように小声で聞いてみる。




「夕さんですか…?あ、ここ来るときに見かけましたよ!この奥の自販機がある所で、宮下先生となださんとお話されてたと思います」




『そうなんだ。ありがとうございます』




「いえ…呼んできましょうか?」




『あ、ううん!大丈夫です。…あと、すみません、今日電車で帰りたくて』




「わかりました!お気を付けて!」




ぴしっと敬礼してくれた田中さんにお礼を言って、楽屋の中へと戻る。




灘さん、というのは大手レコード会社の偉い人で、そういえば宮下先生はそのレコード会社でも楽器演奏のお仕事をされてるそうな…




先生と灘さんに挨拶しに行っても、不自然じゃないよな…

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