第46話

「颯都、この資料目通しておいて。今度の雑誌撮影のだから」




『はいっ』




快が食べているのが羨ましくて、お菓子を物色していたら、後ろから夕さんに話しかけられた。




今日もキリっとした眼鏡に、化粧っ気のない、だけど綺麗な肌に、ピンクの唇と、口角の下のほくろ。




そして長くてふわふわそうな髪の毛をポニーテールにまとめていて、毛先がスタッフパーカーのフードの上でゆらゆらしている。




優しさを1ミリも感じない仕事モードなのに、漂う色気と可愛げが…気になる理由。




自分でも、10歳年上の人に惹かれるなんて思ってもなかったけど、大事なのは歳の差じゃなかった。




「あ、先生。おはようございます」




「夕さん、おはようございます。今日も忙しそうですね」




「いえ、そんなことは…。あ、楽屋こちらです」




「ありがとうございます」




入り口から聴きなれた声と夕さんの会話が聞こえた。




『先生。おはようございます!来てくださったんですね』




「颯都くん、おはよう。快くんも」




「おはようございます」




「これ、差し入れ。皆で食べてね」




『いいんですか?!やったー』




「今日、ソロコーナーでギターやるんだってね。楽しみにしてるよ」




『ありがとうございます』




僕にギターを教えてくれている宮下先生。




ライブにもこうやって足を運んでくれて、応援してくれる、すごくいい人。




夕さんと同い年らしいけど、敬語で話すのはお互い尊敬してるからって、先生が言ってた。

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