第43話

『お待たせ…』




フルーツが乗ったショートケーキと、濃厚そうなチョコレートケーキと、紅茶をテーブルへ運ぶ。




ぴしっと背筋を伸ばした彼は、微動だにせず、じっと床のほうを見つめていた。




『…は、颯都くん?』




恐る恐る、名前を呼ぶと、うるんだ瞳がこちらを見た。




泣いてる……?




実際に会ってみれば、いつも通りだと思っていたけど、メッセージの余裕のない感じを思い出す。




…と同時に、ぱた、と彼の目から大きな涙が零れた。




『………』




どうしたらいいのか分からず、何も言えなかった。




何が彼を苦しめているのかもわからないし、その原因は自分である可能性だってある。




頭の中が、どうしようで一杯になって、なんだか私も泣きそうになってきた。




「……っ」




気づいたら、床に膝をついて、ソファに座る彼を引き寄せて、抱きしめていた。




一瞬驚いた息が聞こえたものの、すぐに彼の私にしがみつくように、腕を回して、嗚咽に近い声を漏らしながら、私の肩を濡らしていく。




「ふっ……ぅ…」




未だにどうしたらいいのかわからないけど、とりあえず落ち着くまで背中をさすることにする。




少しずつ、彼の腕の力が抜けていっているのがわかった—。

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