one

第1話

「桜木ー、アンケート統計まだー?」





『今!今終わります!…どうぞ!』





「はい、次これね。10月から中途で新人さん来るから。桜木が指導係ね」





『え?!私が?!』





「だーいじょーぶ!新人って言っても、中途採用だし、なんせ動画編集やってたらしいから。桜木が教えることはそんな無い」






『…はぁ…』






にこやかにそう言われて、山積みの資料を渡される。





…そしたら私、指導係じゃなく、ただの案内係なのでは…?






「それ確認して、フォーマット入力終わったら、今日は帰っていいから!金曜だし、彼氏と飲みにでも行ったら~?」






『!安藤さん!!大好きです!ありがとうございます!』






「はいはいはいはい、いいから散った散った」






ぺぺっとこちらを見ずに手であしらわれるも、足取り軽くデスクへ戻る。






ここは、都内にある、出版社、スタークリング・ブックの自社ビル18階。





20代女性をターゲットにしたファッション雑誌【 MY(マイ) 】編集部。






そして私は、そこで編集者として働いている、桜木 亜湖(さくらぎ あこ)、25歳。





3年目となる今年春に、ようやくアシスタントから編集者に昇格した、まだまだ下っ端だ。






先ほど私に山積みの資料を渡してきたのは、【 MY 】の編集長である、安藤 三己(あんどう みみ)さん。




若いながら(実年齢は知らないけど、見た目35歳。たぶん40代だけど)、編集長を務める、敏腕編集者だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る