第27話

だって、俺は気付いてしまったんだ。



≪今のままでいいんだ≫


って事に。



このままでいけば、由佳の方が確実に先に社会人になる。


だけど、それはもうどうしようもない事実で。



だったら。


そんな事をくよくよ悩んでないで、会える時間を大切にしていった方がいい。



「……ありがと」



隣を歩く将来の父親に、俺はそう礼を言った。


改めてそんな事を言うのも、何だか照れくさかったけど。



でも、おかげで大切な事に気付けたから。



「んっ?お、おうっ」



よく分からないって顔をしたものの、オッサンはそう言って笑みを返してきた。


そんな彼を見て、俺もまた自然と笑みが零れてしまう。



そういえば、由佳が言ってたっけ。



『だって、先輩の話をする大翔っていつも楽しそうだよ?』



気が付かないうちに、こうやって笑みを漏らしてしまってたのか?


だとしたら、俺はすっかりこのオッサンのペースに巻かれてるって事か。



まぁ、でも。


それも…悪くないかもな。

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