第21話

そりゃあ、甲子園を目指すなら強い私立の学校に行った方がいいだろうし。


シニアリーグで硬球に慣れておくのもいいかもしれない。



でも……。



強い学校に行くのも、硬球に触れるのも。


高校からでいいんじゃないかな?



そう思えるぐらい、俺にとって仲間の存在が大きくなっているんだ。



「あと3年、あいつらと野球がしたいからさ」



そう答える俺に、梨香は「そっか」と言って笑った。



誰よりも、俺と長くいる梨香だから。


その一言で、俺の気持ちはちゃんと伝わったんだろう。



思えば、梨香にも悪い事をしたよな。


俺の都合で彼女にしておいて、由佳が現れたからって振ってしまったし。



別に…嫌いなわけじゃない。


ただ、恋愛対象として見れなかっただけなんだ。



「まぁ私としては、一緒の中学に行けるからいいんだけど。とりあえず、大翔の一番の女友達だって思ってるし」



「……そうだな」



改めて言われ、俺も確信した。



梨香は俺にとって一番の女友達なんだって。



「ちょっと、今の間は何よっ?」



「えっ?気のせいだよ」



頬を膨らませて怒ってくる梨香に、そしらぬ顔でそう答える。



まぁ、そんなんじゃ納得するはずも無くて。


学校に着くまでの間、俺は梨香の執拗な口撃に遭うはめになったんだけどさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る