第20話

「中学に行ったら、一緒のクラスになれるかな?」



慌てて梨香も歩き出し、歩幅を合わせてくる。


とりあえず、俺はそのままのペースを保った。



「私立…行かなくて良かったのか?」



梨香の家は、そこそこ名のある旧家で。


成績の面から言っても、私立に行くものだと思っていた。



だけど、断固として受験をしなかったんだ。



「大翔が行くなら考えたけど、いないのなら行ったって楽しくないし。それに、私がちゃんと目を光らせておかないと、また変な女に捕まりそうだしさ」



由佳さんの為にも、私がそばにいないとね。


そう続けて、梨香はへへっと笑った。



変な女っていうのは、篠原さんの事なんだろうか?



そう疑問が湧いたものの、訊くのは止めておいた。


これ以上、彼女の事は蒸し返したくないし。



「大翔こそ、野球でどこかの私立に行くと思ってたけど?」



今度は逆に、そう尋ねられてしまった。



前にまどかさんにも、中高一貫の強豪校の受験を勧められた事がある。


だけど、俺は地元の中学に行く事を選んだんだ。



今の仲間で、中学まで野球を続けたいって思ったから。

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