第18話
「はぁっ……」
唇を離すと、呼吸を荒くしながら俺をじっと見つめてきて。
由佳はゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「大丈夫…だよ」
苦しそうな声とは反対に、笑顔を浮かべる。
まるで、不安に包まれた幼い子を宥めるかのように。
「心が近くにあれば、それで大丈夫だよ」
そう言って、彼女は優しく俺の頭を撫でてきた。
誰かに頭を撫でられるなんて、本当に久しぶりで。
俺は…死んだ母さんを思い出していた。
病気がちだった母さんは。
自分の方が辛かっただろうに、いつも俺を安心させようと頭を撫でてくれた。
『大丈夫だよ』と言って、優しい笑顔を浮かべて撫でてくれた。
こんなとこまで、由佳は母さんと似てるんだな。
「早く…大人になるから」
彼女の左頬にそっと手を当てながら、言葉を絞り出していく。
「こうやって不安になる事も、いっぱいあるかもしれないけど」
じっと俺の言葉を待っていてくれる彼女。
その表情は、ひどく穏やかで。
どんな言葉でも、どんな境遇でも。
受け入れてくれるような気がした。
「心だけは、ずっと一番近くにいて欲しい」
「……大翔が嫌だって言っても、私の心はずっとそばにいるから」
嫌だなんて、言うわけないじゃん。
そう続けて、俺はもう一度深いキスを与えた。
嬉しくて、愛おしくて。
昂ってきた感情は、もう押さえられなくて。
体の奥の深いところまでも、俺達は何度も繋がった。
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