第16話

「卒業式も来てくれるって言ってたし、すっかり父子じゃん」



「来てくれなくていいんだけど」



大学はもう春休みに入ってるとかで。


卒業式にはまどかさんと揃って出席するって言ってたっけ。



あの目立つ容姿で式に参列しているのを想像するだけで、自然と気が重くなる。


それに、どう見たって兄貴だろ、あれじゃあ。



「私も行きたかったなぁ、卒業式」



そう言って拗ねたような顔を見せる由佳と、全く同じ気持ちだった。



俺だって、由佳に見てもらいたいよ。


小学生なんてレッテルから卒業する俺を見て欲しいし。



年の差は縮められないけれど。


中学生になるという事で、俺達を見る周りの目は確実に変わってくるはずだから。



「式もこの格好で出るんだよね?」



見慣れないのか、そう言って由佳は俺の首元のネクタイへと手を伸ばしてきて。


そんな彼女の左手首をぐっと掴むと、



「何?俺のスーツ姿に惚れちゃった?」



と、意地悪く尋ねてみせた。



「なっ、ち、違うしっ。別に惚れたとかっ……」



顔を真っ赤にしながら焦ってる彼女が、また愛おしくて。


そのまま、俺はベッドに彼女を押し倒していった。

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