第2章 二十歳のキス、その先は…
第18話
今日は、私の高校の卒業式。
卒業後は事務の仕事が出来る会社に就職した。大手保険会社は落とされたけど、実家から通えるほど近い保険会社は早めに内定を貰えた。本当は一人暮らしをしようと思ったけれど、会社が近すぎて部屋を借りる意味がわからなくなり、結局実家を出ることは諦めた。
そうして、3年の冬は学校には殆ど遊びに行ってるようなものだった。クラスには親友と呼べるような友達はいないけれど、いつも一緒にいてくれる友達は2人くらいいた。みんな深いことは探り合わないし、三人でいてもそれぞれ本を読んでいたり、漫画を読んでいたり。親友と呼べるかどうか分からないけれど、一緒にいて落ち着ける存在ではあった。良い塩梅に空気が読めるから、居心地が良い感覚だ。その2人には彼氏がいて、時々彼氏の話題で盛り上がる時がある。そんな時、
「ねぇ、雪子ちゃんの彼氏は?」
「例の刑事さんと、どこまで行ったの?」
と聞いてくる。私はうーんと唸って、返答に困ってしまう。
「彼氏じゃないから。30代だよ。私なんか相手にもされないんだから」
それももう、お決まりのセリフ。次第にみんなも、もうそれ以上聞いてこなくなった。
そう。
18と31なんて、あり得ないカップルだ。恋愛対象になんか、なれない。きっと、坂井さんは私を好きにならないし、私も坂井さんを好きになるわけがない。
でも。
あの時のあのキスは、最高に、気持ちよかったけど。
*
卒業式が終わると、みんなは講堂を出て、中庭で在校生や教師たちとのお別れ会をしていた。卒業生を中心に保護者たちや教員、高校の事務所の事務員たちも出てきて、それぞれ挨拶をかわしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます