第1章  へっぽこ刑事とクールな女子高生

第1話

私は、いつこの男に恋をしたのだろう。



私の名は、渡部雪子わたべゆきこ


特に変わった特技もなく、特別美人でもなく、極々普通の女子高生だと思う。あまりおしゃべりな方ではなく、一人で静かに本でも読んでいるタイプだ。教室でも、いつもそんな感じだったので、特定の親友と呼べるような人はいなかった。



さて。私の話はそこまでにして、ある男の話をしようか。



彼の名は、坂井さかいおさむ


イケメン俳優みたいな名前だけれど、実際この人は、ヨレヨレのワイシャツを何日も平気で着て仕事に行く、だらしない生活感がありありと分かるヘッポコ刑事だ。休みの日なんか、顔を洗わずいつも無精髭のまま外に出ている。素足にサンダル。髪はボサボサ。ほっとくと、ご飯も食べずに一日中ぐうたら寝てしまう。こんな恋愛に程遠い男が、なぜ私の心を燻ってしまうのだろうか。


メールしても普通に1週間以上放置。既読スルーは日常茶飯事。


電話してもほとんど出ない。


…何だか、嫌いになったほうが絶対に楽になれると思う。


楽になれる…?


いや、それはちょっと、違うかな。



**


友人のとある事件をきっかけに知り合って、それからは当事者である面々で会合のように頻繁に会うようになった。


坂井理は、誰よりも一番年上なはずなのに、誰より遅く登場して、早くタバコを吸いたくて喫煙所を探しに辺りをさまよう喫煙中毒者だ。

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