Letter Bitter. 〜アナタへ最後の手紙〜
初めての書き出し小説風
第1話 2人の出会い
朝もまだ遠く、雲1つない空から突き刺すのは月明かり。
それが湖に反射し街灯が辺りになくても周りが見える。
ザッザッザッ…
「…あれは・・・」
砂利道の先。
湖の
バシャーン……バシャーン…
ザッザッ…
「…えっ、人??」
時間は朝4時を過ぎた頃。
そんな時間に人なんかいるはずない。
でも…僕の目の先にいて、湖に向かって立っている。
スゥー…
バシャーン……
スゥー…
バシャーン…
よく目を凝らし見てみると、
その人物は両腕をゆっくりと動かしてる。
しかも偶然なのか動かしたその腕に合わせるかのように、湖の水が波打飛沫をあげてる。
そうまるで、オーケストラの指揮者のように。
スゥー…
バシャーン…
スゥー…
バシャーン…
ホラー映画のようなシーン。
でも、指揮者のように腕を振り、波打させているロングヘアーの女の子に好奇心からなのか、気づいたら側まで歩み寄っていた。
ザッ
ザッ
ザッ…
「夢…じゃない、、よな?」
声かけてみる…か。
と。
スゥー…
バシャーン…
スゥー…
バシャーン…
パシャ!!
気配を感じたのか、その子は腕を止めて裸足の右足を一歩後ろに引きこちらに振り向いてきた。
「!っ…」
振り向いたその子は、白いロングのワンピースを着ていて年齢はおそらく僕より少しだけ大人な感じがする。
「…あなたは?」
「あっ…なんかごめんなさい」
「いえ、謝るところなんかないですよ」
「…こっこんな時間に女の子1人でなにしてたんですか?!」
「うふふ、ちょっとみんなと遊んでたんですよ」
「えっ…み、みんな??」
色々とツッコミたいところだらけだ。
でも、今の状況とすごい冷静に話す女の子に魅入られ何も言えなかった。
「そう、みんなと。私ここ好きなんですよね」
「…」
「あっそうです、あなたに聞いてみたいことがあるんです」
「はっ…え?僕に??」
瞬間で記憶を探ったけど、もちろん目の前にいる女の子とは初対面。
「…はい」
「えー…な、なんでしょう?」
「あなたは残りの人生どうしますか?」
唐突に聞かれた言葉。
でも、僕は答えられずにいた。
それは、今僕自身が悩んでいた事だったから…
これが彼女との初めての出会い。
そして、将来の僕が決まるキッカケとなった。
・
・・
・・・
時は少し戻り数十時間前。
「
「もう終わってるって!」
「お、したら荷物持って降りてこーい!車に積んで行くぞー!あっあと今日の天気調べといてー」
「あーわかってるって…」
「あっお父さん!これも車にお願い…」
「おぅわかった!」
「はぁ…アレクサ、今日の天気は?」
今日のお住まいのところは、晴れのち曇りで、気温は18°です
「アレクサ、ありがとう」
…
今日は前に言われた約束の日。
両親は久しぶりなこともあってウキウキだ。
が…俺は。。
大学4年生に進級してるものの、まだ先のことは何も決まってない。
昔から器用貧乏と言うか、父親の影響もあってか地頭も良く、学校の成績は上の下くらいの点数が取れていたり、母の影響かスポーツもほどほどに出来て小学生の頃は徒競走で1位を取れたりと。
そんなこともあって、これもほどほどにモテてきてお付き合いの経験もある。
まぁほとんどは長続きしないんだけど…
振られる理由も「ねぇ、本当に私の事好きなの?」
と言うような事を毎回聞かれる。
告白され付き合い、別れを言われる。
ほとんど…いや全部そうだった。
正直生活環境は恵まれてると思ってる。
IT系の会社を立ち上げ上手くいってる父。
大企業の社長秘書を長くしている母。
1人っ子だから僕への投資みたいなのは惜しまず色々と揃っていた。
でも、例えば塾に行かせられたり、なにかを強要されたとこはない。
だけど、自分からこれやってみたい!
みたいな事がなく…
そんな僕に両親は「そうしたらこれは?」って色んな提案をしてくれてた。
その提案から僕が選んで歩んできた人生。
贅沢すぎると言われたらそうなのかも。
高校も・大学も両親が提案してくれたところを選んで、良いのか悪いのか問題なく受かってきてる。
結局、大学で面白いかもって感じた学部を専攻しているけど、特に…って感じで。。
気づけば大学4年生になってた。
周りの友達は就職先が決まってるのがほとんど。
こんなにお金も出してもらって申し訳ないって両親への気持ちもあれば、やりたい事や好きな事が特に見つかってないからなかなか動けなくなっていたりと…
両親はそんな僕を見越して、リフレッシュと今後の祈願も兼ねての2泊3日の旅行に連れ出したのだ。
行き先は両親の別荘がある、大きな湖の畔。
この湖は宿泊施設が何個か営業していたり、山の中腹にはその場所一帯を守っているとされている大きな御神木がある神社など、観光地となっている場所。
行けばまぁそれなりに楽しめるとは思うけど、IOT家電などが揃っている自室でゲームをやったりするのが何より楽しめるだろうなって思ってる。
けど、今日は強制的なものだからしかたない…
「…はぁ、、眠い。。」
「ほら晴斗!行くぞー!」
「はいはい、今降りるよー」
大きなリュックに適当な着替えとスマホなどの充電器か入ってるのを再度確認し、スマートウォッチをつけて1階に向かった。
ガチャ…
玄関を開けると、車のトランクにたくさんの荷物が溜まっていて両親が待っていた。
「おっきたか!
「はいはい…」
どさっ
「晴くん忘れ物は大丈夫?」
「母さん、大丈夫だよ心配しないで」
母が少し過保護気味なのは昔から。
「積み込み完了ー!したら乗って行くぞー」
こうして、別荘に向けて移動をした。
高速も使い2時間ほど。
そこまで遠くはない。
車中は母が好きな音楽を流していた。
感性で言うとそこまで合わないから僕はワイヤレスイヤホンで自分の世界に入ってた。
道中に父がこの旅行の目的みたいなのを話しているのを少し覚えている。
久しぶりの3人で時間を過ごす事。
アウトレットに買い物に行く事。
そして、それぞれの健康や俺の会社と晴斗の今後為に祈祷しに行く事。
あとはその場の流れで!
だったかな。
昔からスピリチュアルな事は信じていなく、それで過去に彼女と言い合いしたこともあった。
今日の運勢とか今月の星座占いの結果に影響されやすい子だったから…
まぁそんな父の話を半分に眠ってしまい、気づいたら到着してた。
別荘は湖にも直接繋がっているような立地だ。
時間は12時を過ぎた頃。
車を止め、荷物をそうそうに別荘に入れ、生活ができるように色々と支度を始めた。
掃除は必要だからそれぞれが慣れた手付きで自分の担当範囲をこなす。
と、長時間の移動もあって、昼食は出前にするそうだ。
そんな何気ない事でも両親はウキウキで話をしながら準備をしていた。
僕はと言うと…掃除などを済ませた後、出前が届くまで自室へ。
「…静かだな」
実家の方は大都会ほどではないが、車の音などかよく聞こえていたが、ここは1階から小さく聞こえる両親の声以外、何も聞こえない。
いや、実家では聞くことのない自然や鳥などの音はあった。
「ふぅ…」
「これからどうするかな。。」
大学院・就職・起業・その他?
色々あるけど、どれもな・・・
好きな仕事なんかわからないし、大金持ちになりたい訳でもない。
でも、生きていく為には仕事をしないといけない。
生きているだけでお金が掛かる人間社会。
教育の義務、勤労の義務、 納税の義務。
生まれた時から我々はお金を稼ぐことが義務付けられている。
また、安楽死や尊厳死などは日本で現状、法的に認められていない。
死を早める行為は犯罪に問われる。
さらに、死んだ時ですら葬式などなどでお金が掛かる。
「・・・なんかなぁ。。。」
つくづく思う。
自分にもっと欲求があったらなって。
ひと昔前の男性だったら、例えば高級車を乗り回したいとか、高級な腕時計の為にとか。
あるいはタワマンとかの良い所に住む為に!
って、仕事をする上で必要な欲求があり、それらが活力になる。
でも、そんなの僕にはない。
だからこれまで自分の意思で選択したことがなくて。
で、結局今もそう。
死にたいって思った事はない。
けど、生きたいと思ったこともない。
「はぁ・・・」
ポロン...ポロン
と、インターホンが鳴る音がした。
出前が届いたようで、父に呼ばれ部屋を出た。
タッタッタ....
リビングでは届いた出前を母が開けテーブルに並べていた。
ウチの唯一のルール?なのかもしれないけど、ご飯などは基本的に家族で食べることになっている。
それは、普段はなかなか揃わないことが多いから、揃っている時は必ず一緒に食べることって。
用意してくれてる母を手伝い、3人でご飯を食べ始めた。
結婚して26年くらいの両親。
付き合った期間も入れるとだいたい30年の関係になる。
長い時間を過ごしているにも関わらず、ずっとイチャイチャと言うか、楽しそうに会話したり接しているのを見て、本当すごいなって思う。
それは嫉妬や鬱陶しいとかではない、尊敬を感じる。
そんな両親を横目に食べすすめていると父から話しかけられた。
「
「・・・あーね...」
「まぁそりゃ好きな事とか興味ある事が仕事に出来たらベストだ」
「でも、世の中それが叶っている人ってごく僅かだから、見つかっていない今の自分を
「…うん」
「どの道が正解!だなんてないから」
「就職できなかった時はウチの会社でも大丈夫だから、そんなに心配すんなよ」
「私たちは晴くんが選んで進む道を応援するからね」
「あ、ありがとう・・・」
「とは言えってことで、明日はこの近所にある大きな御神木がある神社で、3人の健康と俺の会社と
「で、今日はこの後、アウトレットで買い物な」
「はいはい」
ずっとパワフルな父の予定通り、この後買い物に行った。
・・・
・・
・
その夜は別荘で母の渾身の手料理が振る舞われた。
今回はフレンチ系で、白ワインに合うものを中心に出され満足の夕食。
僕はほどほどにワインをいただき、父に関してはすごい飲んでしまって、この日3人で6本ほど空けていた。
酔っ払ってソファーで休んでいる父をほっておいてほろ酔いな母と片付けをする。
カチャカチャカチャ...
「晴くん〜ご飯どうだった〜?」
「えーあっ、いつものように美味しかったよ」
「あら〜よかったぁ〜」
「で〜1番はどれだった〜?」
完全に酔っ払いの反応。
ただ、悪がらみでないから母が喜ぶと思う料理を率直に答えた。
「1番は・・・あれは鯛??のアクアパッツァかなー」
「あ〜もうさすが晴くん〜!!1番手を凝ったのよ」
「そう言ってもらえてよかったわ〜」
「まぁ母さんが料理上手いのは昔からだからね」
「あらあら!嬉しい〜」
「あー母さん、洗い物はやっとくから父さんの介保したげて」
「終わったら僕も部屋に戻って適当に休むから」
「ありがとうね〜」
「母さんもちゃんと休んでね」
「はーい!」
スタスタスタ....
「パパ〜大丈夫〜??」
…
バサン....
「ふぅ、、、」
洗い物も終わり、飲み物をもって自室のベットに倒れ込んだ。
自分で運転してないけど、長時間の移動はかなりくる・・・。
「夕食前に風呂に入っておいたのは正解だったな・・・ふあ〜」
あくびが止まらない。
ガラガラ・・・
ベランダに繋がっているガラス戸を開けると、ヒンヤリした夜風が入り込んだ。
「ん〜・・・気持ちぃ」
4月の夜はまだ寒い。
でも、お酒で体も暑くなっているからちょうど良い感じ。
「・・・すぅ…zzz」
時間はまだ23時を過ぎた頃。
夜風と月明かりが少し部屋に差し込む感じもあって、外をぼーっと見ていたらそのまま夢の中へ。
…
「…くぅ・・・ん、、、」
喉の渇きで目が覚めた。
「あぁ・・・寝てしまった…今何時」
時計を見ると朝4時前。
あのまま結構寝てしまっていたようだ。
「ゴクゴク....プハァ・・・」
部屋に持ってきていたお茶のペットボトルを口へ運び、ベットの上であぐらを組み飲み干す。
目に映る月明かりは眠る前より深くなっていた。
まだほんの少しお酒が残っている感覚がある。
が、かといって眠気さはあまりない。
「う〜ん、、、よいしょっと」
薄い長袖の羽織を1枚手に両親が起きないように静かに別荘を出た。
街頭はないものの、月明かりだけで周りが見える。
その月明かりを頼りに湖まで向かった。
これが彼女と出会った最初につながる。
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1話を最後までお読みくださいまして、誠にありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?
次の話に興味を持っていただけていたら嬉しいです!
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