第45話

翌朝、玲蘭が家を出ようとすると、母がお弁当を渡してきた。



「お母さん。これ...!お弁当?」



「もう、コンビニでおにぎりは辞めましょう。

お弁当お母さん作るから。


玲蘭。これからは、すこし、肩の力抜いてちょうだいね。」



玲蘭はびっくりした。



「ごめんね。昨日、伊織くんとベランダで話してたの、聞いちゃった。



お母さんね、本当は2人とも連れて行きたかったから、玲蘭があのとき、離れたくないって言ってくれて、嬉しかったの。



経済的にも不安はあったし、行事も重なることもあって、寂しいときもあったかもしれない。

母親として、何もできていなかったけどね。


玲蘭を引き取って良かったって思ってるのよ。」




玲蘭の目は潤んだ。




「それより、中山さくらちゃんたちに嫌なことされてるの?もし、辛いなら先生に言うから、お母さんに言ってね。」




「されてないよ。大丈夫。」




「制服、昨日洗ってあったから。」




「あれは急な雨に打たれたからよ。大丈夫。」




玲蘭はお母さんのお弁当を受け取って立ち上がった。




「お母さんこそ、毎日お弁当なんて無理しないでよね。普通にこれからも働いていくんだからさ。



でも、ありがとう。」





玲蘭は少し晴れた気分で、学校へ向かった。




もう、誰かの顔色や評価を気にして行動するのはやめようと思った。





伊織が少し前を歩いていた。




「伊織、ありがとう。伊織のおかげで、お母さんやみんなに対して気を遣うの、やめようと思った。



これからは私のために、自分を動かしていくよ。」





「おう。」





「伊織ももらった?お弁当。食べるの、楽しみだね!」




玲蘭はそう言うと小走りで走っていった。

そして、奈々と合流して、笑顔を見せる。





玲蘭の少し後ろから、伊織は彼女の姿を優しい目線で見ていた。

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