第9話
ある日、玲蘭が帰宅すると、3つ離れた妹•志穂が不貞腐れた顔をしていた。
「志穂。どうしたの?」
「お母さん、あの会社の人と、結婚するんじゃないかな。」
「あぁ、慎也さんだっけ。」
「今日、夕ご飯の時、話があるって言ってた。お姉ちゃん、朝の挨拶運動とか言ってさっさと出かけちゃったから、伝わってないと思うけど。」
玲蘭は夕飯の準備を、しながら志穂の話を聞いた。
最近母•真由美には、会社で、いい感じの仲の男性がいる。
志穂は再婚の話になるのではないか、と思い、憂いているようだ。
「志穂...再婚、嫌なの?」
「だって、父親なんか、要らないもん。」
父親に対して良い思い出がなかった志穂は、新しい父親に対する、不安な気持ちがあった。
「でも、お母さん、きっと私たちのためを思って再婚に踏み切ってくれてる部分もあるんじゃないかな。」
「相変わらずいい子ちゃんだよね。お姉ちゃんは。」
志穂は離婚したときの事情は知らないので、いつもいい子ぶりっ子の姉に対して、生意気な口を叩く時があった。
玲蘭は志穂の八つ当たりな言葉を無視して、夕飯の野菜を切っていた。
夕日が差し込むアパートで、包丁で野菜を切る音だけが響いていた。
母は19時に帰ってきた。
玲蘭と志穂は食卓に座って、ご飯を食べようとする。
「玲蘭。夕飯ありがとうね。いただきます。」
志穂も手だけ合わせて、ご飯を食べ始めた。
「ねぇ、あのね。お母さん、2人に会って欲しい人がいるんだけど。」
「慎也さんって人?」
「え?う、うん。良くわかったわね、志穂。」
お見通しな子供に母•真由美はタジタジになる。
「いやだ。再婚なんか。」
「し、志穂!」
ハッキリ言う志穂に玲蘭は慌てて怒る。
「志穂はそう言うかな、って思っていたわ。とりあえず、会うだけ会ってみて欲しいの。ダメかしら。」
「会うだけなら。」
「ありがとう、志穂。」
志穂がお風呂に入っているとき、玲蘭と真由美はお皿を洗っていた。
「私は賛成だからね。慎也さんがどんな人かにもよるけど。」
「ありがとう。素敵な人よ。2人のこと、きっと大切にしてくれるわ。」
母には、自分のワガママで苦労かけているから再婚すれば少しは母の負担が減るかもしれないと思っていた玲蘭だった。
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