ピンクカルサイトを捧ぐ
第1話
「さっきはごめん」
放課後の教室には、俺と彼女の2人きり。
普段ならすでに部活へ向かっている時間だが、今の俺は目の前の女の子のご機嫌をなんとしても取り戻さなければいけない。
「なぁ、何か返事してくれよ、
何度呼びかけても返事はおろか、視線すらも窓の外に向けられている。ほんのり眉間には皺が寄ってるし、これは、かなり、まずい。
これ以上何か一つでも俺が選択を間違えてしまえば、おそらくは存在を無視されたまま彼女は帰路につくだろう。
それは、困る。非常に困る。
嗚呼、脳裏に浮かぶのは先程まで同じ教室にいたクラスメイト達の姿。
悪ノリに乗せられて想いとは真逆の失言をした俺が、柚麻のご機嫌取りに必死な様を気まずい顔で、あるいは呆れた顔で見やりながら部活へ向かった顔といったら……
特に
「…やっぱり」
ポツリ、と柚麻が呟いた
教室が喧騒に溢れていたら聞こえたかわからない、独り言のような言葉。
「男子って、
視線は変わらず窓の外だけど、その表情は先ほどまでとは逆に眉が下がって、悲しそうな瞳をしていた。
今、彼女の表情から笑顔が消えているのは、そんな瞳をさせているのは、俺のせいなんだろう。
決して俺を見てくれないその瞳に、ちっぽけな自分のプライドがガラガラと音を立てて崩れていくのを感じた。
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