第24話

たとえば、高校時代のどこかの瞬間で



たとえば、4年前消えた連絡先を、取り戻そうとしていれば



たとえば、”夢”を”夢”のままにしなければ



「うん。何かきっかけがあれば、そうだったかもしれないね」

答えながら、グラスに入ってるカクテルを流し込む



たぶん、私が翼を恋愛対象にする瞬間はいくらでもあった

同じだけ、そうしない瞬間があっただけ



その結果が今の私たちだと気づいたところで後悔するわけでもないけれど



「でも、私は今の翼との関係も好きだよ」



確かに触れたはずの温度はもう残っていない

くっついてる時は熱いくせに、離れるとあっという間に消えてしまうのは私たちの関係そのものにも思えた



事実、高校を卒業してからの数年間は特別親しくしていたわけじゃない

それでも、顔を合わせれば昔と変わらない私に戻ってしまう



そんな関係でいられる相手は、きっと翼しかいないから

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る