第21話
けれどその手が翼に届くよりも早く、彼の温度が私から遠ざかる
行き場をなくした手は所在なさげに宙を泳いでいるうちに空気に冷やされていった
手だけでなく、身体ぜんぶがあっという間に寒さを思い出していく
急速に思考がクリアになっていくのを感じる
たった今まで、ここが外だということも、寒さもすべて忘れたように気にならなかったのに
本当に翼の言う通り、さっきまでの時間が夢だったみたい
でも、夢から醒めるためにはきっかけも大切だ
「…そ「冷えてきたし、もう中に戻ろうか。気分転換になった?」
今度は私が翼の言葉をさえぎって会話の主導権を握る
この男相手にやられっぱなしなんて私らしくない
翼が夢に導いてくれたなら、現実に戻るきっかけは私が作るべきだ
「あぁ、すっかり酔いも醒めちゃった。寒いのに付き合ってくれてありがとな」
そこにいるのはみんながよく知る翼の顔
どうやら私の選択は間違っていなかったらしい
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