桜と恋と密室死体
高井希
第1話桜の花びら
豪華な書斎の床一面に、桜の花びらが舞い散っていた。
高価そうなリクライニングチェアには人影が。
彼は胸を西洋風のナイフで刺され、目と口を大きく開いたまま息絶えていた。
窓には内側から鍵がかけられている。
我々が入って来たドアにも内側から鍵が掛かっていた。
「密室だ。これは密室殺人事件だ。」
若者が小さな声で呟いた。
「おい、進藤、起きろ。朝食が出来たぞ。」
「サツキ?。何故、俺の家に居る?」
「この前、合鍵を作っておいた。それより食事が冷める。俺は先に食べるぞ。」
「何故合鍵?。それに、お前、いつサウジアラビアから帰って来た。」
「今日、日本に戻ってきた。空港からここに直接来た。ああ、シャワーを借りたぞ。」
「勝手にしろ。俺も食べるぞ。いただきます。」
「食べ終わったら旅行の支度をしろ。バイトだ。」
「旅行?。バイト?。」
「リゾートバイトだ。俺とお前、二人で申し込んだ。」
「大学の授業は?。」
「2週間の短期バイトだ。問題ない。」
「海風が心地良いな。迎えの船はどれだ?。」
「あそこだ。AKIZUKIと書いてある。」
乗船して、甲板の水槽でフグが泳いでいるのを横目で見ながら、船室に入ると、操縦席には魚群探知機が設置され、その後ろに取り出し式の長椅子が設置されたいた。
サツキはさっさと長椅子に横たわって寝息をたてはじめた。
船長は海の男らしく無口で、何を話しかけてもハアやウウムくらいしか答えてくれなかった。
仕方なく海を眺めて時間を潰していると、弁当箱を渡された。
弁当も食べ終えて、うつらうつらし始めた時、サツキが目を覚ました。
船長はサツキにも弁当箱を渡し、自動操縦にして自分も弁当を広げた。
「ところで俺達、何処に行くんだ?。」
「これから行く竜の眼島には戦前にウニで儲けた金で建てた古い洋館がある。それを来年からホテルにする予定らしい。そしてその検証する為にホテル経営のプロを来週から招待する事になった。」
「それと俺達のバイトの関係は?。」
「食事や掃除なんかは、館の使用人が引き続きホテルの仕事をするんだが、島には年寄りしか残っていないので、力仕事が出来る若者を三週間アルバイトに募集したんだ。」
「サツキ、お前やけにくわしくねえ?。」
「最近は裏バイトとかあって信用出来ないから、念の為、裏を取ったんだ。」
俺達の話を聞いていた船長がおもむろに会話に加わってきた。
「竜の眼島の洋館には噂がある。戦争前にウニで儲けたという当主はなにかヤバいことに手を出していて、刺客が何度も島にやって来たが、奴は何度も生き延びた。あの洋館にはなにか仕掛けがあるって噂だ。」
ー船長、普通に話せたんだ。ー
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