花のようなフィギュア

ファミマの一番くじで息子がB賞を当てた。

B賞はヒロアカの死柄木弔のフィギュアだった。

私は観葉植物の隣に死柄木弔を立たせることにした。


そこにあるのはフィギュアだと分かっているのに、なぜだか一瞬、赤い花があるように見えた。


死柄木弔のマントの色は暗くて渋い赤色だ。

激しくなびいているマントの形状が、遠目から見ると赤の花びらと錯覚する。


思わず、綺麗……。と呟やいた。


冷房の風はフィギュアの右から左へと流れているが、マントは左から右へと風の流れに逆らってなびいている。死柄木弔らしい。


ちょうど自宅のリビングには観葉植物はあっても花はなかった。

なぜなら私、花をすぐに枯らしてしまうから。


だけど死柄木弔のフィギュアならば枯れる心配はない。

常に私の目を欺き、花があるような部屋として癒してくれそうだ。


ヴィランなのに粋なことをしてくれる。


死柄木弔のフィギュア、我が家に来てくれて嬉しいよ。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る