第二話 似て非ざる少女と都市伝説が欲する“とっきゅう“という何か

 伊那先綺里緒いなさききりお、彼女は今年で中学一年生になるらしい。汐とはどこかの病院で知り合った仲だと本当に簡単に話してくれた。

 私の家に現在滞在している私の叔母さんに綺里緒を会わせるわけだけど、少しだけ私は綺里緒に叔母さんの症状を説明する事にした。汐と違って楽しそうにするわけでもつまらなさそうにする訳でもなく意外にも真剣に話を聞いてくれる綺里緒に私は少しばかり彼女の評価を更新した。


 とはいえこの子に何ができるんだろうとも同時に思う。


 しかし、それはこの場に汐がいたとしても私には何も考えつかないし、乗り掛かった船である。きっと目的地に彼女は連れて行ってくれると信じよう。叔母さんは食事を終えて母と雑談なんかをしていた。そこに私は綺里緒を連れて話に入る。綺里緒は礼儀正しくお辞儀をして母と叔母さんに良い心証を与えた。この子は世渡りが上手だ。

 叔母さんがお土産に持ってきてくれたお菓子なんかをつまみながら本当に普通の会話中に叔母さんは着信もしていないスマホを持って話し出した。

 

「あら? マリちゃん? どこにいるの?」

 

 至って普通の会話だが、鳴っていない電話で誰かと話す姿は不気味に映る。

 

「成る程、これは思ったより危険ね」

 

 ずずっとお茶を飲みながら綺里緒はそう冷静に言った。そしてまさかの一言「永空……お姉様の叔母様、私にもマリさんとお電話させてくださらない?」と持ちかける。母もこれが冗談ではなく汐の知り合いだから真剣に言っているんだと思ったんだろう「あら、マリちゃん、とらちゃんのお友達がお話ししたいって、かわるわね」と言ってスマホを綺里緒に渡した。

 

「もしもし、初めまして」

 

 綺里緒は「うふふ、マリさん面白い」と本当に喋っているのか? 演技とは思えない会話をしていた。

 

? それって何かしら? それが欲しいのね? うん、探しとく」

 

 私と母がやや固まる中、綺里緒と叔母さんだけはしばらくマリという人物について語り合っていた。とてもシャイな子らしい。いつも自分の居場所を電話で教えてくれるという。それは国外だったり、空港だったり、県外だったり、少しずつ近づいてきている。

 

「叔母様、またマリちゃんとお話しさせてくださいましね! 永空お姉様、お洒落なカフェに連れて行ってくれるんでしょ。早く行きましょ!」

 

 綺里緒は私を連れ出して何か話したい事があるんだろう。私はそれに気づくと頷いて綺里緒を連れて家を出ると、綺里緒が「メリーさん症候群よ」とFRSの症状を語った。

 

「聞いた事くらいあるでしょ? 私、メリー、今どこそこにいるの? ってやつ」

 

 それはあまりにも有名で、四半世紀以上語られる都市伝説や怪談話で流石に私も知っている。それにマリちゃんという名前も少し似ている。FRSにもいくつか症状わけがなされている事を初めて知った。

 

「永空お姉ちゃんの叔母さん、何かを探しているのよ」

 

 それは見つからない物、それを見つけるタイムアップがメリーさんこと、マリがやってくるまで。

 

「見つける事ができれば症状を抑えられるかもしれない」

 

 汐ではないと落胆した私がいたけど、綺里緒はとても凄い。叔母さんを救えるかもしれない状況を既に提示した。「でも、その前にマリが来たら。叔母さん、いなくなるわよ」と冷たく言った。

 

「でも」

 

 私は脅すようにそう言った綺里緒に笑って見せた。

 

「でも綺里緒ちゃんならきっと叔母さんを救ってくれるでしょ? 綺里緒ちゃん、汐みたいに私の見えない物……見えてるみたいだし。信じてる」

 

 自然に出た言葉だった。だけど、それを聞いた綺里緒は少しだけ考えて少しだけ照れた。可愛いところもあるじゃない。そして俯いて、私を再び見た時、私の顔が相当緩んでいたのをみて「ば、ばっかじゃない!」と再び照れた。

 

「それはそうと、とっきゅうっての探さないといけないけど、皆目見当がつかないわ。電車?」

「特急って事?」

 

 私は先ほど綺里緒が叔母さんの電話で話していた内容「そういえば電話って普通に話したの?」と聞くと、「私はFRS発症者と触れていれば症状を体験できるのよ。私は汐お姉ちゃんの似て非ざる者」と自然に返してきた。

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