第五章 メリーさんが来る前にアレを届けてもらう話 全5話

第一話 汐がいない週、汐の助っ人がやってきた

 汐に相談したい事があったんだけど、何を考えたのか汐はサマーキャンプのリーダーボランティアに行ってしまった。


 今回、私はFRSを発症したであろう親戚の叔母さんの事を汐に助けてほしかったのだ。だけど、汐が帰ってくるのは三日後、症状がこれ以上進行したらもう入院生活になるだろうと最後に親戚周りをしているのだ。

 叔母さんは至って普通に見える。だけど、突然スマホを持って誰かと話し出すのだという。私たちの聞こえない着信を受けて、電話に出る。昨年旦那さんを亡くした叔母さんを旦那さんが呼んでいるんじゃないかだなんて不謹慎な事を言っている人もいるけど、私は元気で明るいおばさんが大好きだ。


 汐だって自分の限られた時間を大事に生きているのに、やりたい事をやめて戻ってきてとは私も口が裂けても言えない。でも、汐ならなんとかしてくれるんじゃないかという期待があった。

 夜の二十一時半、私のスマホが着信、電話の先は汐からだった。

 

「やぁ、とら。戻りたいのはやまやまだけど、こっちも中々面白くてね、私の代わりに助っ人を頼んだよ」

「助っ人?」

 

 汐の言う助っ人ってまさか、大前茜厨二病じゃないだろうな。あの子はただの厨二病だから今回の件、全く役に立たない。「ついでだからしばらく面倒見てあげてくれないか」とややこしいお願いをされてしまった。


 汐の事だから恐らく力になってくれる人材だと思うんだけどなんだか引っかかってしまう。年上の男性とかだったら気まずいし、私のコミュニケーション能力がグールプ内のみで低さが露呈してしまう。そうこうしている内に、汐は私にとんでもない言葉を残して電話を切った。

 

「そろそろとらの家に到着するってさ。出迎えてあげておくれよ。あの子、結構人見知りが激しいからね」

「は? 何言って……」

 

 私の家の前に車が停車した音が聞こえた。外を見るとタクシーが停まっている。そしてタクシーからガーリーな格好をした小学生くらいの女の子が降りてきた。

 

「とらー、なんか汐ちゃんのお知り合いのお嬢ちゃんがきたけど。貴女何か分かる? ちょっと降りてきてー、外にいるのもアレだから貴女も入りなさい」

 

 お母さん、子供とはいえ知らない人を家にあげないでよ。私は呼ばれたのでリビングに向かった。そこでは行儀良く椅子に座ってロールケーキと牛乳を食べているさっきの女の子の姿。ゴスロリって言うんだっけ? 


 フリフリの格好。何歳になってもこういう格好の人はいるけど、やっぱいこのくらいの年齢の子が着るのが一番似合っているなと綺麗な顔をした少女を見つめる。

 それにしてもこんな時間に甘いお菓子なんて出して、汐の家の親戚とか関係者でしょ? 夕食とか用意してるかもしれないのに、勝手な事していいのかな。


 お母さんが汐の両親に報告しにくると、汐の両親は笑顔で彼女を迎えにやってきた。漢字は分からないけど『きりお』ちゃんという事だけは分かった。どうやら夏休みの間、汐の家に遊びに来たらしいが、その汐が留守という。

 汐が帰ってくる間の数日間相手をしてくれないかと汐の両親に頼まれた。特に私も予定があるわけじゃかなったので快く了承する。しかし、私は翌日彼女と会って思い出してしまった。汐は助っ人を私に向かわせたと言った事。

 

「初めまして、綺里緒ちゃん。私はとこしえの空って書いて永空とらよ」

 

 私の事をじーっと見つめて、綺里緒はこう言った。

 

「初めまして永空お姉ちゃん、クランケFRSはどこ?」

「クランケって?」

「FRSの発症者の事よ。汐お姉ちゃんに聞いてないの? 仕方がないから私が貴女を助けてあ・げ・る」

 

 まだ年端もいかないような子供が堂々と、上から私を小馬鹿にしたようにふふんと笑う。まぁ、汐の知り合いだしまともな子じゃないんだろうとは思うけど、この年でFRSの事を知っているんだ。

 なんとなくだけど、この子は汐と同じ。FRSの発症者なんじゃないだろうかと嫌な予感と共に、確信めいた何かを感じながら、私は綺里緒に、私の叔母さんを会わせる事にした。藁にもすがる想いというのはこういう事を言うのだろう。

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