輻輳する想い

輻輳する想い Part 1

 新世界秩序ニュー・ワールド・オーダーが数多く持つアジトのひとつにて、円卓に囲うように数人の男女が着席し、これまで発生した不審な事件を纏めた映像を、ホログラムで観ていた。

「全く、査探協会ったら、やり方が少し過激なんだよ」

 金髪の男が呆れた口調で言った。

「まあまあ、決定的な証拠を出してしまえば、こっちのもんや」

 長髪黒髪の女が張り切った。

「でも、証拠を突き出した所で、やつらのことだ、我々の痛い所を突いて反撃してくるよ。以前にも何度か、我々側の会社がそれで幾つも潰れちまった」

 宇千羽がそう言うと、自動ドアが開く音がして、会場内の皆はそこに一瞬目を遣った。入ってきたのは国頭嵩音と、もうひとり、ピナフォアを身に纏ったお馴染みの顔の者だった。多くは渋い顔をしたり、或いは笑いを堪らえようとして歪んだ顔をしたりした。宇千羽はその姿を見るや否や、まともな姿勢で椅子に座れなくなるくらい腹を抱えて笑った。

「遅れて申し訳ない。只今、国頭と津畑が帰還致しました」

 国頭は遅刻したことを気にもせず、堂々と胸を張って言った。一方の夜鳥は、あまりの恥ずかしさに誰とも顔を合わせようとはしなかった。

「事情はこちらでも把握済みだ、心配はない。全く、とんだ災難でしたな。だが、それよりも、津畑君の恰好は一体どんなつもりだい? 遅刻の罰として、そんな召使いのような恰好をして我々に奉仕してくれるとでもいうのかい?」

 金髪の男は涼しい顔で言った。

「ええ、遅刻に対しての罪悪感に駆られて、同行した津畑はどうしても贖罪の意を表明したく、罰としてメイドのような恰好をして、掃除、洗濯、炊事、ありとあらゆる家事したいとのことで。私は恥をかくだけだと再三彼に伝えたのですが、どうしても聞く耳を持たなくて……」

 嵩音の弁明に聞いていられなくなった夜鳥は彼女に向かって怒った。

「嘘つけ! お前が着ろと言ったんだろうが」

「理由は何でもいいけどよ、結局交渉はどうなったんだ」

 退屈そうにしていた長髪黒髪の女は言った。嵩音はクリスタロゲンが協力関係を承諾した旨を伝えた。会場は喜びと安堵の空気に包まれた。が、話はすぐさま事件に関する話に切り替わり、再び緊張したものとなった。嵩音と、いつの間にか通常の服に着替えた夜鳥は所定の席に座った。度重なる不審な行動から、数々のまちで起きた中毒死に、ハルゲヌスとカドモスが関与しているに違いないと参加者は凡そ意見は一致した。しかし、彼らがウルバンとトールの脱獄を協力したかまでは確信は取れず、また査探協会が本当に彼らと関与しているという決定的な証拠を見出だせずにいた。とはいえ、彼らはイコサゲンやクリスタロゲンから協力も協力を要請し、ハルゲヌスとカドモスの捜索を決定した。

 話はクリスタロゲンの襲撃事件に切り替わる。襲撃犯について、その場に居たマグナスが目星をつけていることを嵩音は共有した。また、マグナスが提供した、犯人と思われる人物に関する情報も、ホログラムに写して見せた。この事件は間違いなく査探協会が関与していて、また居場所もある程度割れていることから、彼らの親戚に当たる2族の面々と共に近々接触を試みることを提案する。参加者の中には、それは敵による陽動作戦だとして、安易に乗るべきではないことを指摘された。そうと知っておきながらも、嵩音は彼らを制圧すれば、僅かでも敵の情報を吐かせることができるのではないか、と付け加える。向こうも間違いなく仕掛けてくることを想定して、2族の援護として複数の戦力を忍び込ませることをさらに提案した。とはいえ、極力戦闘は避けたいとして、やはり乗り気でなかった者も数名いた。作戦はひとまず保留ということになった。

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