第3話 下着を見たことは黙っていよう。
「スキルねぇ…」
俺は宿のベランダから寒空の下、星を眺めていた。ここは地球と違って星が綺麗に見えるらしい。
先輩との風呂での一件の後、目が覚めた俺は彼女と一緒にベルさんに事情を話したのだ。
自分たちが東京から来たこと。そして、妄想によって先輩の姿を見たこと言った。
しかしベルさんは東京という場所を知らず、日本や地球も知らなかった。
やはり昨日のメールのこともあり、ここを異世界と考えるしかできなかった。
この世界の者は食と休養によって魔力を回復するらしく、もしかしたらここのものを食べた俺にも魔力が蓄えられたのかもしれない、と。
「ここにいたのね桜木くん」
「先輩も星を見に来たんですか?」
振り返るとそこには先輩がいて、なぜかいつもより輝いているように見えた。
「先輩じゃないでしょ。ここに会社はないんだから、上下関係も無しよ」
「そうは言われましてもね……」
「——
「はい?」
「
なるほど。輝いて見えたのは、仕事ではなくプライベートで会う先輩は貴重だからか。
「優香さん…でいいんですかね?」
「うん、京介くん」
そう微笑みを返してくれる彼女はとても可憐で美しく、俺には耐えきれられなかった。
やばい、可愛すぎる!優香さんの全てを知りたいって思っちまったよ!
両手でニヤける顔を隠して悶えていると、突然視界が明るくなった感じがした。
——なんだ?
異変を感じて、両手を外して前を確認した。
なるほどね。今度のスキルは透視か。
全てを知りたいとは願ったが、まさか服が透けて下着姿の彼女が映るようになるとは。
「それは過激すぎますよ…」
その言葉に優香さんは疑問符を浮かべた。
よし。下着を見たことは黙っていよう。
・ ・ ・
「ここの部屋しか空いてるところが無くて、お二人には同じ部屋で過ごしてもらうことになりますけど大丈夫ですか?」
「はい。もちろんですよ」
ベルさんに問われ、俺は快く受け入れた。
ここの宿で空き部屋があるのは珍しいことのようで、今はこの一部屋しか空いていないらしい。部屋と食事まで面倒を見てくれているベルさんに迷惑はかけられないしな。
俺はくるりと振り返って、うしろに立っている優香さんに言う。
「というわけですが、すいませんね。なんか男の俺が同じ部屋って」
「鼻の下、伸びてるわよ」
「そりゃもう、憧れの先輩が派手な下着を着ていて、同じ部屋で寝れるなんて——あっ!」
俺は慌てて口を塞いだ。
どうしたんだよ俺は!ここに来てからちょっと変じゃないか⁉︎
優香さんは顔を真っ赤にして自分の体をギュッと抱きしめるような仕草をした。
「また変なスキルを習得したの⁉︎」
「……おやすみなさーい」
「ねぇ!きいてる⁉︎」
電気を消し、ゆっくりとベッドに入った。
明日も良い一日になりそうだ。
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