第2話 先輩って綺麗な肌してますね

 俺と先輩は見知らぬ場所に来た。というか連れてこられたのか?


「先輩、部屋から出てここがどこなのか確認しましょう」

「そうね。桜木くんに無理やりそういう場所に連れてこられた可能性もあるし…」

「ないですよ!」


 誤解をされる前に場所の確認をして、風呂に入って着替えもしたいな…。

 昨日の疲労が残っているのか、重たい体を起こしてベッドから出て扉を開けた。

すると、目の前にはちょうど朝食を持ってきたのであろう若い女性が立っていた。

 金髪……地毛なのか?

まるで人形のような大きな瞳と腰の細さ。

ゲームに出てくるエルフみたいだ。


「えっと、どちら様?」

「私はこの宿で働いているベルと申します。深夜、街で倒れているあなた方を見つけて看病させていただきました。体調が良いようならトーストを焼いてきたのでどうぞ」

「そっか、ありがとう」


 その子の頭をポンポンと撫でて朝食の乗ったトレーを受け取った。街で倒れていたという言葉が引っかかるが詳しい話は後にしよう。


「ベルさん熱でもあるのか?顔が赤いぞ?」

「な、なんでもないです!ごゆっくり!」


 なぜか彼女は慌ててその場を去ってしまった。まあいいか。朝食はもらったし。


「先輩、食べましょうか」

「桜木くん、今のはダメでしょ…」

「なんの話ですか?」


 ここがどこなのか、なぜ二人は倒れていたのかという疑問はさて置き、とにかく一旦落ち着いて朝食をとることにした。



「ふぅー、生き返るー」

「先輩はなにも食べてなかったんですか」

「家に帰るのが遅くなってねー。そう言う桜木くんは昨日の夜ちゃんと食べたの?」

「自分は疲れてて風呂すら入れてないですね…」

「ふふふ、忙しいとよくあることね」


 そうやって先輩が笑う姿を見ると、なぜだか心が落ち着くような気がした。

 しばらく二人で話していると、部屋に先程の女性が来て、風呂に入っていいと言われた俺はなぜか先輩と二人で混浴している。


「絶対にこっち向いたらダメだからね!」

「はい!それにしてもなんで先輩まで来たんですか…」

「ベルちゃんに私もお風呂に入りたいって言ったらここに案内されたのよ。ここなら大丈夫ですってね。湯気のせいで桜木くんがいるなんて気付かなかったもの」

「なるほど。ベルさんいい仕事しますね」


 ——今、俺のうしろには先輩がいる。

タオルは巻いているようだが、その中はもちろん裸!働け細胞!働け妄想!

グッと目を閉じると、脳裏に先輩の姿が浮かんだ。やけにリアルだな、俺の妄想。


「先輩ってお風呂に入るときってポニーテールにしてるんですか?」

「ええ。それがどうしたの?」

「ずっとタオルがはだけないように胸元で押さえているんですか?」

「そうだけれど……。もしかして見てるんじゃないでしょうね ?」

「いえ、見てませんよ」


 俺の妄想の先輩と現実の先輩の姿が同じってこれは奇跡なのか⁉︎

ついに俺もそういう能力を手に入れたのか!


「それにしても先輩って綺麗な肌してますね」

「絶対に見てるでしょ!」


 その言葉と同時に放たれた桶が俺の後頭部にヒットし、気絶してしまった。

 妄想だけど先輩の裸を拝むことができたからいいか…。

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