牡蠣食いの悔い書き
牡蠣にあたると、二度と牡蠣を食べられない。なんて人がいるらしいです。食中毒の症状が苦しいからです。苦しみの経験が体にとりつき、拒否の反応を示すということです。
しかし、いま私は、寝床とトイレを往復しながら、脱水症状で朦朧としながら、次に牡蠣を食べることを考えています。牡蠣が食べたい。牡蠣は私の好物だったのです。この度、初めて牡蠣に当たりました。聞いていた通り、想像以上の苦しみです。苦しみを和らげるために、牡蠣のことを考えます。
生牡蠣。磯の香り、甘味。滑らかな食感。鋭い日本酒で、苦みを切る。海の恵みをまるごと頂く豊かな満足。自分の中で、特別な一杯とする。自分で自分を演出する楽しみ。
焼き牡蠣。炭の色。伝わる熱。わずかに殻が開き、ぐつぐつと煮えた汁が炭にあたる音。貝むきの扱いに、次第に慣れる。ひとつの目的のために作られた道具を使う喜び。湯気に迎えられる。温度を味わうという体験。
カキフライ。食感の比類ない組み合わせ。まろやかな海のミルクが揚げ物のコクと出会う曲がり角。レモンをかける。タルタルソースをつける。爽やかな酸味の下で相合傘。
牡蠣水。凝縮された海の恵み。漬ける時間がすべて豊かな悦楽。冬の贅沢。苦みを楽しむことの余裕を感じる日。高級な氷を用意する。特別なグラスを用意する。シルクのハンカチで露を拭う。
ズボン牡蠣。履く宝石。唯一無二の肌触り。柔らかいことが第一の価値。選ぶものと選ばれるもの。ICカード。箱ティッシュ。
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