第6話 金はあるヤツから取る

「条件とは……?」


 ラフィーナが聞いてくる。

 俺がどんな条件を出してくるのか、不安みたいだ。


「条件は――100万ゴールドだ」

「100万ゴールド?!」

 

 ラフィーナが驚く。


「グラストさんは無料でヒールを使うと聞いていましたが……やはり正体は悪徳神官だったのですね。がっかりしました……」


 あからさまに残念な顔をするラフィーナ。


「それは違う。金はあるところから取るのが俺の主義だ」

「あるところから……?」

「ああ。王女殿下はこの国の最高権力者。普通の民衆は違うだろ?」

「なるほど……」


 ラフィーナは指を顎に当てて考え込む。


 それに今の教会には、金が必要だ。

 教会の隣に、孤児院がある。

 教会が運営する孤児院で、資金が不足している。

 子どもたちに1日2食を出すのがやっとだ。

 100万ゴールドがあれば、あと3年間は1日3食を食べさせられるだろう。


「……わかりました。100万ゴールドを用意しましょう。今の王国には、グラストさんの力が必要です。


 ラフィーナは、俺に頭を下げる。

 ぶるんっと、大きすぎるおっぱいが揺れて――

 その時。

 

「……謝ってください」


 俺の横にいたリスタが、震えた声で言う。


「グラスト様は、すっごく優しい立派な神官様なんです! あたしたち平民にもいつも親切で、孤児院の子どもたちに、魔法を教えたりもしてします。この教会のみんなが、グラスト様が大大大好きですっ! そんなグラスト様を【悪徳神官】と呼ぶなんて……大聖女様であっても許せません!! 謝ってください……っ!!」


 リスタがラフィーナに向かって叫んだ。

 拳を握りしめて、目に涙を溜まっている。

 リスタの真剣な表情を見て、ラフィーナは、


「……グラストさんが皆さんにとって、特別な存在であることはわかりました。【悪徳神官】と言ったのは撤回します。でも、謝罪はしません」

「っ!! ちゃんと謝って――」

「謝罪は、グラストさんが王女殿下を治したらします」

「だったら、もしグラスト様が王女殿下を治したら、謝罪だけじゃなくて……」

「何でしょう? わたしは何でもします」


 ラフィーナは、澄ました顔で言う。

 感情的になるリスタに対して、冷静さを崩さないラフィーナ。

 さすが大聖女、と言ったところか。


「大聖女様はスカートを持ち上げて、下着をグラスト様に見せながら、【わたしが愚かでした。ごめんなさい。グラスト様】と言ってください!!」

「「…………」」

 

 リスタの衝撃的な発言に、理解が追いつかない俺とラフィーナ。

 スカートを持ち上げて下着を――?

 俺の聞き違いであれば……と、俺は一縷の望みに賭けたが、


「……わかりました。わたしも大聖女です。人を疑ったのなら、それ相応のことをしましょう」


 ラフィーナの返答のせいで、俺のかすかな望みは打ち砕かれた。


「あ、あ、あ……ごめんなさい! あたし、大聖女様になんてことを……!」


 現実に引き戻されたリスタが、顔を真っ赤にして謝る。

 

「ふふ。別にいいんですよ。わたしの下着ぐらい、王国のためならばいくらでもお見せしましょう」


 柔らかく微笑むラフィーナ。

 いやいや、その発言は逆に大聖女としてどうなんだ……?

 と、俺がツッコミを入れる隙もなく、


「では、決まりましたね。さっそく行きましょう。グラストさん♡」



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