第86話 絶対不敗の魔族を倒す
「あたくしは魔族!【ビョウ・デ・キエリュウ】よぉおん!!」
魔族イチワ・デ・キエリュウの色違いがやってきた。
魔族ってこいつらしかいないのだろうか……?
「キエリュウ? なんだそのひっどい名前は!」
ルシエルが思わずそう突っ込んでしまう。
「親は真剣に考えて、その名前をつけたのか……!」
「ぶ、ぶ、無礼者ぉ!」
なんかキレてる。
ちょっと自分でもないなって思ってるのかな……?
「で、デオチ・デ・キエリュウさんは、いったい何しにきたわけ?」
「あたくしの夫! ビョウ・デ・キエリュウを殺した相手の、弔い合戦にきたのよぉん!」
んんんっ?
デオチ・デ・キエリュウは、どう見ても……オス。
それの……夫……?
「え、ビョウ・デ・キエリュウって男じゃなかった……?」
「そうよぉん!」
「あんたも男だよね?」
「だからなに!?」
だからなに……?
う、うーん……うん。
あんまりそういうところに、突っ込むのは辞めておこう。
色々から怒られそう。
魔族がやってきた。狙いは私。
「もっくん、私らを守れるかい?」
「無論じゃあ!」
「皆さん、大樹の近くに! メイよ! 見ておるがいい! 強くなった……おぬしの守り手の姿を!」
「ぐー……」
メイちゃん……。
リシアちゃんの腕の中で、すやすや寝ている。
もっくんはちょっとへこんでいたけど、気を取りなす。
「魔族よ、わしが相手じゃ! 世界樹メイの守り手! もっくんが相手にしよう!」
「掛かってきなさい! もっとも……あたくしが負けるわけないんだけどねえん! 絶対! 100%!」
自信満々のデオチ・デ・キエリュウ。
「自分から絶対とか100%とか言うと、負けたときに恥ずかしくないのか貴様っ!?」
とルシエル。
「まけないわよーん! なぜなら……あたくしにはおまえらに負けない自信があるから……!」
というとことで、デュエル開始。
私たち、もふもふ達は観戦ムードだ。
敷物を敷いて、座る。
「もっくんがんばえー」
「ミカ神殿……緊張感がなさすぎないか……?」
「え、だって私が出れば勝つし」
「なんたる自信……」
うんうん、とモリガンが自信たっぷりにうなずく。
「行くわよ……!」
ごぉお! とデオチ・デ・キエリュウの体から
「必殺【Gバック】!」
「じーばっく?」
闘気で強化した体で、こちらに向かって全力で突っ込んでくる。
「ミカ神殿!? 相手が突っ込んでくるぞ!?」
「みたいだねー」
「軽っ! あんな高エネルギーの物体が突っ込んでくるんだぞ!?」
「平気平気」
デオチ・デ・キエリュウが私たちめがけて突進してきた。
ドガァアアアアアアアアアアアン!
「ふははは! これぞ! わが
~~~~~
絶対不敗
→敗北を認めない限り、不死身の体となる
Gバック
→体の内側に闘気エネルギーを貯めた状態で、相手に体当たりをし、大爆発を起こす
~~~~~~
「ま、生きてますがね」
「なにぃいいいいいいい!?」
私たち、全員無事だった。
「わしの【樹結界】で、防がせて貰ったのじゃ!」
~~~~~~
樹海結界
→
森の生命力を凝縮させ、最強の盾を出現させる
~~~~~~
周りに森の木々があるときに限って発動する、
さらに能力【起死回生】によって鍛えた結果、結界の硬度は玄武の娘、
「あたくしの必殺Gバックを受けて生きてるなんて……!」
「Gバック……自爆……ただの自爆技じゃあないかあれ! 何をたいそうな技名をつけてるのだっ!」
とルシエル。
この子どうにも、そういう変なところを、突っ込みたくて仕方ない子らしい。
「不死身の体に、自爆技。なんという反則急な組み合わせだ……」
ルシエルの額に汗が流れる。
ふふん、とデオチ・デ・キエリュウが得意げに胸を張る。
「絶対不敗がある限り、何度だって自爆技が使えるの!」
「技名と名前がふざけてるが、なかなか……強い! ミカ神殿、どうするっ!?」
いちいち鋭いなこのこのツッコミ……。
「どうするって? そりゃ……どうもしないよ。もっくんが勝つし」
私はレジャーシートの上で、ごろんと横になる。
KAmizonで買ったおせんべいを、皆でわけて食べる。
「命のやりとりをしてるのだ、ふざけてるもがもが……」
ルシエルの口にせんべいを突っ込む。
「まあまあ、これでも食べて落ち着いて。お茶もあるよ」
「そうです、ルシエル。落ち着きなさい。これは最初から、勝ちの決まってる試合なのですよ」
モリガンがおせんべいを上品に食べる。
「ミカはまだ、本気を出していない」
「戦ってるのはミカ神殿ではなく、もっくんなのでは……?」
で、もっくんVSデオチ・デ・キエリュウ。
「2倍闘気でもだめなら……10倍でいくわよぉおおおん! 10倍! Gバックぅううううううううう!」
10倍の量の闘気をうちにためて、そして、樹海結界めがけて突っ込んできた。
ドゴゴゴゴゴォオオオオオオオオン!
結界以外の樹木が、吹っ飛ぶ。
なるほど、頭良い。
樹海結界は、周りの樹木からエネルギーを採取し、構築してる。
でも周りの木々を吹っ飛ばせば、エネルギーを供給できなくなるって寸法か。
「ぜえ……はあ……これで周りの木はすべて吹っ飛んだ! 次で、決めるわよ! 50倍Gバックぅうううううううううう!」
さらにエネルギーを貯めて、デオチ・デ・キエリュウが自爆攻撃してくる。
ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
「あなたぁ……! あたくしが、敵を討ってあげましたわよぉおおん!」
しゅるんっ、とデオチ・デ・キエリュウの体に、無数の樹木の根が絡みつく。
「そんなバカな!?」
とルシエル。もちろん私たち、無事。
「周りの樹木は全て吹っ飛ばされた! 樹海結界のエネルギーは作れないはず! なのにどうして、生きてるのだっ!?」
「ルシエル、それ相手のセリフだから」
「す、すみません! 訳のわからない事態に直面して……つい!」
ほなしょうがないか。
「そこのツッコミ女の言ったとおりだ! どういうことだ!?」
ツッコミ女って……。
まあ、じゃあ答えてあげるか。
「冥土の土産に教えてあげるけど、【起死回生】能力を、もっくん持ってるのよ」
「なっ?! そ、それは我らが魔族の能力! なぜ持ってるのよぉん!?」
「え、私が貸し与えたんだけど」
「どういうことなのぉおおおおお!?」
「なんか、できる」
「「説明が雑……!」」
デオチ・デ・キエリュウとルシエルに突っ込まれてしまった。
「樹木の木々が吹き飛ばされようと、起死回生によってすぐに再生可能! しかも、再生すればするほど……わしは強くなる!」
「むっきー! あの人の能力を、何我が物顔でつかってるのよぉおん! 許せないわぁあああああ!」
また自爆攻撃しかけてきそう。
「100倍よおおおおおおおおおおん!」
ズドォオオオオオオオオオオオン!
「効かぬぅうううううううううう!」
「効かないぃいいいいいいいいい!」
「うるせえええええええええええ!」
とルシエル。まあ、それは否めない。
「ま、まだよ! まだ! あたくしの能力は……絶対不敗! 負けを認めぬ限り……負けない能力なのよぉん!」
にぃ……とデオチ・デ・キエリュウが勝ち誇った笑みを浮かべる。
「
すると……もっくんはにやりと笑う。
「わしは守り手じゃ。世界樹を、敵から守れば良い。仲間が来る時間を、稼げれば……の」
うん、よしよし。
「まずは、合格かな。魔族相手に、これだけ持ちこたえることができれば十分でしょ」
私は
「あんたをぶっ倒すのは、
「はんっ! 何をえらっそうに! あんたなんか全然強そうに……」
すっ……と私が手を頭上にかざす。
「
瞬間、空を……無数の魔法陣が覆い尽くす。
「じゃ、お疲れ」
無数の魔法陣から、魔族を殺す光線が発射される。
ズドドドドドドドドドドドドドド!
しばらく光の雨は降り注ぎ続けた……。
「して……ころ……してぇ……」
ボロボロになったデオチ・デ・キエリュウ。
その手には、黒いツノみたいなものが握られ、差し出された。
絶対不敗の弱点。
それは、負けを認めない限り、という条件がついてること。
負けを認めてしまうと、能力が解除され、こうして倒せるようになるって寸法。
「じゃ、お望み通りに」
魔法で核を破壊。デオチ・デ・キエリュウは消えたのだった。
「さすがお母様!」「さすが神!」「かみー!」
リシアちゃん達が褒める一方……目が覚めたルシエルが一言。
「いや神は神でも邪神みたいな戦い方だったのでは!?」
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