第77話 魔族絶対ぶっ殺す女神像、作った


『我が兄! イチワ・デ・キエリュウの敵を討ちにきたぞ!』


「なんで二度も同じこと言ってるのよ……あんた……?」


 アベールの街の頭上には、イチワ・デ・キエリュウの弟とかいう魔族が出現していた。

 イチワ・デ・キエリュウと同じで、竜神っぽいみためだ。


 でも鱗の色が違う。

 こっちは銀色をしていた。


「大事なことだからだ……! 貴様だな、我が兄を討ったという邪神は!」


 邪神て。

 酷いなぁ。


「この【ジカイ・デ・キエリュウ】が、兄に変わって貴様を殺す!」

「あ、そう。やってごらん」


 ジカイ・デ・キエリュウが両腕を広げる。


「うぉおおおおおおお!」


 両腕に光が集まっていく。

 闘気オーラってやつだっけ? 


 自然エネルギーを両腕に集めてる。


「食らえ! 竜頭撃ドラゴン・ヘッド・ショット!」


~~~~~~

竜頭撃ドラゴン・ヘッド・ショット

闘気オーラを手に集中させ、放出する闘技。

闘気オーラが竜の頭に見えることから、名付けられた

~~~~~~


 両手を付き合わせて、「波ぁ……!」を出す。


 闘気オーラのエネルギーが竜の形へと変化し、アベールの街に向かって放たれる。


 ドガァアアアアアアアアアアアアアン!


『兄よ、見ているか! あなたの敵は取ったぞぉおお!』

「取ってないけど?」

 

『なにぃいいいいいいいいい!?』


 衝撃によって起きた土煙が晴れる。

 アベールの街は全然無傷だ。


 外壁の中はもちろん、外壁だって傷一つついていない。


「おお、ちゃーんと女神像、動いてるみたいだねー」


 私を模して作られた女神像から、淡い緑色の光が発せられてる。


~~~~~~

女神像

→最高神ナガノミカを模して作れた石像。

相手が攻撃してきたときに、防衛システムが起動する

~~~~~~


~~~~~~

防衛システムLEVEL1【結界】

→外部から攻撃を受けた際に、街を覆う結界が瞬時に展開される。

この結界のエネルギーは龍脈地の魔力、および、敵の攻撃のエネルギーから捻出される

~~~~~~


『バカな! 竜頭撃ドラゴン・ヘッド・ショットを受けて無傷だと!? いったいどんな結界を張ってるのだ!?』

「相手の力を吸収するタイプの結界だよ」


 いかに強い攻撃を打ってこようと、攻撃を吸収して、結界のエネルギーに変換してシッ舞うのだ。


『今のは間違いだ! 食らえ! 竜頭連撃ドラゴン・ヘッド・マシンガン!』


 両手を広げて、高速で、連続で前にエネルギー弾を打ち出す。

 さならがらマシンガンのごとくだ。


 だが……残念。


「魔族がエネルギー攻撃してくる限り、全部吸収しちゃうんだよね」


 魔族は闘気オーラっていう、瞬時に自分の力を上げる超技術を使う。

 この女神像には、相手の闘気オーラを吸収する、対魔族用プログラムが組み込まれてるのだ。


「そんな複雑な魔法を、アイテムに付与するなんて……」


 ごくり、とふぶきが意気を飲んでいる。

 ぜえはあ……とジカイ・デ・キエリュウが肩で息をしていた。


『く、くそぉお! こうなったら……直接攻撃だ! 転移門ゲートぉ!』


 ジカイ・デ・キエリュウが転移門ゲートを発動させる。


『結界内部に侵入してやるぅううう!』


 来ると思った。

 転移門ゲートの中に飛び込んだはずのジカイ・デ・キエリュウが……。


 入ってきた穴から、出てきたのである。


『どうなってるのだぁ!? 確かに転移門ゲートを使い、結界内部に侵入したはずなのにぃいいい!?』

「悪いね、追い出してもらったよ。防衛システムその2を使ってね」


~~~~~~

防衛システムLEVEL2【強制転移】

→結界内に敵が侵入した場合、または、結界内で素行不良により、敵と判断された場合、結界の外に敵を強制的に転移させる

~~~~~~


「魔族が転移門ゲート使って、不法侵入してくるのはわかってたからね」

「魔道具に、このような複雑な術式……どうやって構築したのじゃ?」


「私の力、全知全能の、全能スキルを使ったんだ」


《眷属になろう》を使うことで、全能、つまり、私が必要とする力を、好きに付与することができるのだ。


 女神像は、わたしの分身のようなもの。

 それゆえ、このような複雑、かつ強力な力さえも、アプリで付与できるのだ。


「さ、わかったでしょう。ジカイ・デ・キエリュウ? 君たち魔族の力は、対策させてもらってる。うちに手を出すのやめて、大人しく帰りな」

『ぐぬぬぬう~~! 舐めやがってぇええええええええ!』


「え、舐めてないよ? 忠告してあげてるだけだけど」


 この魔族、いちおう、どら子の親戚に当たるからなぁ。

 完全削除アンインストールで一発消しもできるけど、それはしない。

 警告して上げる。


 ま、それを無視してなお襲ってくるなら、容赦しないけどね。


『こうなったら最終奥義を使う!』


 ジカイ・デ・キエリュウが自分の心臓に手刀を突き立てる。


『我が、命を……削り! 発動する! 最終奥義ぃいいいいいい!』


 ジカイ・デ・キエリュウの体の周りから、膨大な量の闘気オーラが放出される。

 ピキュイーーーーーーーーーン!


「な、なんじゃ……? 女神像の目が、光ったのじゃ……?」


 ふぶきが怯えてる。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

 ふぶきがゆっくりと、頭上を見上げる。

 女神像が……。


「女神像、でっかくなってるのじゃぁあああああああ!?」


 さっきまで、160とかそこらしかなかった、女神像。

 なんとうことでしょう。


 今は、10メートル級の巨人になってるではありませんか。


双頭撃ダブルドラゴン・ヘッド・ショットぉおお!』


 ジカイ・デ・キエリュウが命を削った一撃を放つ。


 闘気オーラで作られた、双頭の巨大なドラゴンが、襲いかかってきた。


 だが。

 巨大化した女神像が、右手を前に突き出す。

 ガシッ!


『掴んだぁあ!?』


 ぐしゃりっ、と巨大女神像が、エネルギー攻撃を握りつぶしたのだ。


「な、なんじゃあれ!? なんなのあれ!?」


 ふぶきが私の襟を掴んで、がっくんがっくんと揺らす。


「うん……なんなのあれ?」

「おぬしも把握してないんかい!?」


「うん……え、なにあれ……?」


 プログラムは、結界と強制転移だけのはずだった。


~~~~~~

防衛システムLEVEL3【巨大防衛ロボ・ミカりん】

→女神像が、自分で学習し、作り出した新しい防衛システム。

相手のエネルギーを吸収し、巨大化。敵を殲滅する

~~~~~~


「どうやら自分で学習して、能力を作ったらしい……」

「そんなこと可能なのか!?」


「ねえー……そんなことできるんだねぇー……」

「なんで自分で自分の能力把握してないんじゃああ!?」


 さて。

 でかミカりん(命名私)を前に、ジカイ・デ・キエリュウは怯えてる。


『ひいいいい! ば、バケモノぉおおおおおおおおおおお!』


 ジカイ・デ・キエリュウが逃げようとする。 

 まあ、そりゃ、自分の命を削って放った一撃を、防がれちゃね。


 撤退は賢い判断だと思うよ。

 ただ、まあ……。


「もうちょっと早く撤退したほうがよかったね」


 でかミカりんが腕を伸ばし、ジカイ・デ・キエリュウを掴んだのだ。

 そして天高く持ち上げて、地面めがけて、たたきつけたのだ。


『ぎゃぁああああああああああああ!』


 ぐしゃり、と。

 ジカイ・デ・キエリュウは地面にたたきつけられ、ボロッボロになってしまった。


「う……ぐが……い、ぽも……うごけん……」


 それは女神像も同様みたいだ。

 その場から一歩も動けないみたい。


「巨大化したり、動いたりしたけど、あくまで女神像、なのじゃな」


 お地蔵さんと一緒だもんね。

 まあお地蔵さんは巨大化しないけども。


 外壁の外で、ボロボロになったジカイ・デ・キエリュウが倒れてる。


「て、ったい……」


 転移門ゲートを開き、逃げようとする、瀕死のジカイ・デ・キエリュウ。


 残念。


「「「いらっしゃーい♡」」」


 彼の前に居たのは……。

 武装した、デッドエンド領民達だ。


 その手には、私の貸し与えた伝説の武器。

 コアのダンジョンで鍛えられた、精鋭の領民たち。


 ウシカじいちゃん、スイーパばあちゃんたち、人外レベルにまで強くなった領民達が、ゴミのように転がってるジカイ・デ・キエリュウのもとへ近づく。


「お、お、お助けぇえええええ! 神様ぁあああああああああああ!」


 残念。

 神は、あんたを助けないと決めたんで。


「じゃ、皆さん。やっちゃってください」

「「「了解です、ミカりん様!」」」


 領民達が各々持った武器で……。


 ドガッ! 

 バキッ! 

 グシャァアアアアアアアアアア!


 ……50人から、たこ殴りになる魔族を見ながら、ふぶきが呆然とつぶやく。


「わしは夢でも見ておるのかな……? 人間が魔族を圧倒してるのじゃ……」

「ううん、現実だよふぶき」


「そうか……うむ。神を怒らせないようにしよう。これからは……」


 ふぶきが、女神像に手を合わせて、頭を深々と下げる。

 頭を上げるころには……。


 ジカイ・デ・キエリュウは、ボロぞうきんのようになり、ピクリとも動かなくなったのだった。


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『無能令嬢、【極東の悪魔】のもとに身代わりで嫁ぐ~「妹の代わりに死んでくれ」と親から言われたので、家から出て行くことにしました。でも嫁ぎ先の人たちは皆いい人たちで幸せです』


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