第49話 神料理で眷属パワーアップさせる



 皆でタコパしてると、母麒麟が近づいてきて、頭を下げてきた。


「ミカちゃん、麒麟親子は、あなたの眷属になりたいそうよ」


 玄武の娘、黒姫くろひめが、母麒麟の言葉を翻訳してくれる。

 眷属……か。そういえばまだ眷属化してなかったっけ。


「いいの?」

「くぉんっ」


 またあの愚かな王太子が、この子たちを狙ってくるかもしれないから。

 力を与えておきたかったし。


「いいよ。よろしくね」

「くぉん!」「ぴー!」


 私は《眷属になろう》を起動する。

 名前を付けて上げないとね。


「じゃあ……お母さん麒麟は……」


 ママ+麒麟で……。


「マーリン。あなたは、【マーリン】よ」


 母麒麟ことマーリンの体が、光り輝き出す。


「な、なんだこの強い光はっ?」


 リタが驚愕してる。

 その間、マーリンの体がむくむくむく、と大きくなっていく。


 そして、光が消えると……。

 そこには、10代半ばくらいの、とても美しい少女が立っていた。


「な、な!? は、母麒麟殿が、人間になったぁ!?」


 リタが驚いている。あれ、魔物の人化についてはご存じない?


「くぉん? くぉん!」


 マーリンもまた、自分の体の変化に驚いてるようだった。

 改めてマーリンを見やる。


 一見すると普通の人間に見える。でも、側頭部から2本の角が生えている。


 髪の毛は白……なんだけど、光の加減で五色に輝いてる。

 まつげも白い。なんだか外国人っぽい。

 すらりとスレンダーな体つき。


 背も高い。

 モデルみたいに美人さんだ。

 

「くおん?」

「あれ、まだしゃべれないの?」


 フェルマァとかはしゃべれてたのに。


「母麒麟はまだ若いですからね。人語をしゃべれないのです」


 とフェルマァが教えてくれる。

 人化はできるが、言葉はまだしゃべれないのか。


 私は自分で着ていた白のダウンジャケットを、マーリンにかけてあげる。


「人の姿のときは、服着ようね」

「くぉん!」


「で、次は子麒麟ちゃんね」

「ぴっ!」


 子麒麟ちゃんが近づいてくる。

 どういう名前にしようか……。


「ちっちゃい麒麟だからチーリンとか……?」

「ぴー……」


 なんか嫌そう。

 まあ、そうか。今は小さくても、成長すればおっきくなるわけだし。


「うーん……りんりんとか?」

「ぴー……」

「あれ? 可愛くない?」

「ぴっ」


 黒姫くろひめが子麒麟ちゃんをじっと見ていう。


「ねえ、ミカちゃん。この子麒麟ちゃん、オスよ」


 だから可愛い名前がいやだったんだ。


「じゃあ、りん太郎は?」

「ぴっぴっぴー!」


 子麒麟ちゃんはうれしそうにスキップしてる。


 眷属になろうで、子麒麟ちゃんに名前を付ける。

 瞬間、りん太郎の体が光り輝く。


 むくむく、と額に一角が生えた。


「角が生えたね」

「ぴー!」


 たんっ、とりん太郎が地面を蹴る。

 すると、空をタンタンタンと駆け出す。


「空歩? だっけ。フェルマァも使える、空を駆けるスキル」


 マーリンは人化を覚え、りん太郎は角が生え、空を走れるようになった。

 二人ともこれで強化された次第だ。


「聖女様。お願いがございます」

 

 リタが私の前に跪く。


「我らにも力を授けてはいただけないでしょうか」

「あ、そっか。エルメス以外、眷属化してなかったね」


 エルメスは吸血鬼化を解除する際に、眷属にした。

 でも残りのリタ、デカタンク、そしてニンシアはまだ眷属にしてなかったのだ。


《眷属になろう》を立ち上げ、リタの写真を撮り、眷属にしようとしたのだが……。


 ビーーーーーーー!


「あれ? Error表記になってる。眷属にできない……? いったいどうして……?」


 困ったときは全知全能インターネット


~~~~~~

・リタを眷属化できなかった理由

→リタが人間だから。

人間は最高神の被造物であり、最高神以外が眷属にできない。

~~~~~~


~~~~~~

・エルメスの眷属化

→エルメスは人間ではない。

吸血鬼(人外)になった時点で、神の被造物ではなくなった。よって、眷属化が可能となった。

~~~~~~


「人間は眷属にできないんだってさ」

「そう……なんですか……」


 リタがものすっごくがっかりしていた。

 ちょっと申し訳ない。


「贅沢ですよ、人間」


 フェルマァが腕を組んで言う。


「あなたがたはミカさまから伝説の武器を貰ってるではないですか」


 そういえば、家においてあった伝説の武器(置物同然)、黄昏の竜にあげたんだっけ。


「フェルマァ様の言うとおりでしたね。すみません、聖女様」

「ああ、いやいや。気にしないで」


 しかしなるほど。

 人間の場合は、名付け(眷属化)でパワーアップできないのか。


 そういえば、名前を付けるとつよくなるのは、魔物ならではのルールって言っていたし。


 人間には適用されないと。

 そもそも、そういえばこの人達ってレベルどんなもんなんだろう。


「リタ。あなたのレベルってどんなかんじ?」

「75です」


 75かー……。


「弱いですねっ。わたくしのレベルは……2000!」

「2000!? す、凄すぎます!?」


 ふっふーん、とフェルマァがどや顔をしてる。

 伝説の獣と比べたら、確かに75は低く見える。


 神獣達もレベルは余裕で3桁あるし。

 リタたちのレベルも、もうちょっと上げたい。何があるかわからないし。


「レベルはわかったけど、他の数値はどんなものかな?」


~~~~~~

リタ

【種族】人間

【レベル】150


HP 150(+300)

MP 150

攻撃 150(+300)

防御 150(+300)

知性 150

素早さ 150(+300)

~~~~~~


 あれ……?

 おかしいな。リタのレベルが、自己申告したものより上がってない……?


「リタ。あなたのレベル150になってるんだけど」

「なっ!? そんなバカな!?」


 リタが自分の懐からカードのようなものをとりだす。

 あ、見たことある。ギルド証だ。確か自分のレベルが見えるんだっけ。


「ほ、本当だ!? 麒麟退治に向かう前は、確かにレベル75だったのに!?」


 ということは、一夜にしてレベルが倍になったってこと?


「デカタンク、ニンシアのレベルは?」


 気になったので、私は二人に尋ねる。

 デカタンク達も自分のギルドカードを見て、ぎょっ、と目をむいていた。


「おれはぁ140になってる!?」

「……せっしゃは130でごじゃるっ。倍になってるでごじゃるよ!」


 全員がレベル倍に……?

 しかもステータスに+補正が……あ。


 これ、前にも見たことある。


~~~~~~

・黄昏の竜のステータスが強化されていた理由

→異世界の食べ物を食べたことで、強化された

~~~~~~


~~~~~~

・異世界の食材

→地球の食材は、異世界人の力を強める効果がある。

~~~~~~


 そういえば、あったね。前にも。飯食べて強くなるみたいなやつ。


 人間の場合は、眷属になろうによる眷属化のパワーアップができない。

 けど、こうして異世界のご飯(地球のご飯)を食べることで、強くなれるわけだ。


 私は軽く説明をする。


「すごい……! 聖女様の聖なる料理が、人を強くするということですねっ!」

「え? いや、まあ……」


 別に私がこの料理(※たこやき)作った訳じゃあないんだけど。


「人を強くするこの美味しい料理に、名前を付けるのはいかがでしょうっ?」

「え、名前……?」


 地球の料理じゃあだめなのだろうか。


「はい。聖女様の料理……聖女料理とかはどうでしょう!」


 な、なんか恥ずかしいんですが……。


「駄目ですね」


 おお、フェルマァ。

 君は味方してくれるのかっ。


「聖女はミカさま以外にもいます。もっと、ミカさまが作った感がほしいです。【ナガノミカ料理】、がいいかと」


 ハズい……普通に辞めて欲しい……。


「やめて」

「なるほど長いですかね。じゃあ、【ナガノ料理】で!」


 ……駄目だ。フェルマァ、どうやっても私の名前を付けたいようだ。


「じゃあもう……それでいいよ……」

「はいっ。では、これよりミカさまの作る、食べると美味しくて、活力がわく料理を、【ナガノ料理】とします! 決定!」


 ぱぁ……! とたこ焼きが光り出したっ。

 え、ま、まさか……。


~~~~~~

・たこ焼き(ナガノ料理)

→食べると一定時間レベルが5倍になる

~~~~~~


 え、なにこれ?


「聖女様! 私のレベルが375になりましたっ!」


 リタのレベルは元々75だった。

 またレベルが増えたってことになる。

 しかも5倍だ。


「え、なんで上昇レベルが2倍から5倍になってるの……?」

「料理に神の名前を付け、魔化されたのではないかの?」


 魔化。アイテムなどに、魔法効果を付与すること。

 異世界(地球)の料理に、【ナガノミカ】という、現人神わたしの名前を付けた。


 それにより、料理の効果がさらに上昇したってこと?

 そういえば、フェルマァに私の名前を付けたらさらに強くなったし……。


「料理に名前を付けるだけで、効果が上昇するなんて聞いたことがないのじゃ……やはり凄いな、我が主は」


 こうして地球の料理は、ナガノ料理という名前に変わり、食べるとものすごい強くなる料理に進化したのだった……。

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