第42話 高速で新居を作る


 あくる日。

 私はログハウス前にいた。


「えー、皆さん。注目ー」

「ばうばう!」「わんわん!」


 ふぇる太&ふぇる美が青嵐せいらんを追っかけまわしてる。


「しゃー!」

「ばう!」「わんっ!」


 青嵐せいらんに飛びついて、もみくちゃにするふぇる太たち。


『ねえちゃ、おさんぽいきたいのねっ!』

「みー! みー!」


 朱羽あかはね白猫はくびょうは私の両肩に載ってくる。

 白猫はくびょうはどうやらお昼寝がしたいらしい。


「あらあら、皆元気ね~」

「元気すぎて困るのじゃ……」

「…………」こくこく。


 ふぶき&黒姫くろひめ、そしてふぇる美がうなずいてる。


『ミカさまの御前ですよ、静かになさい!!!!』


 フェルマァが馬鹿でかい声で叫ぶ。

 皆暴れるのをやめて、私の前に整列する。


 この巨大なフェンリルが皆怖いらしい。


『ミカさま、どうぞ』

「ありがと。さて、見ての通り仲間が増えて、おうちが手狭になりました」


 現状、ログハウスにはフェルマァ以外の子ども達+ふぶき+黒姫くろひめが暮らしてる。


 元々一人用の家だったことを考えると、狭くなるのは当然と言えた。


「家をもう一棟建てようと思うの。お客さん来たときに、泊まれるようにしたいしね」


 駄女神たちがうちに泊まりにきたとき、フェルマァのテントを使わせて貰っているのだ。


「主よ。もう一棟ログハウスを作るとなると、木材が大量に必要となるの。それに、工事に時間と費用もかかるし」


「そこはスキルや眷属達に力を借ります。おいでー」


 私が呼ぶと、野菜の眷属達がわらわらと集まってくる。


「開拓係のだんしゃくんたちに木材を集めさせて、あとは建築リーダーのサツマくんに、家を作って貰う感じ」


 サツマくんにはモリガンからもらった、神鎚ミョルニルがある。


「そうか、神鎚ミョルニルの力で、資材があれば一瞬で物が作れるのじゃったな」

「そゆこと。だから、必要になってくるのは木材のみ」


 だんしゃくんたちには木材を採ってきて貰いたい。


「ミカちゃん、どれくらいで完成するのかしら?」


 と黒姫くろひめが尋ねてくる。

 全知全能インターネットで検索。


「3日か。遅いね」

「「早いわ(のじゃ)!」」


 黒姫くろひめとふぶきがツッコミを入れる。


「いやだって、神鎚ミョルニルがあれば一瞬でログハウスできるのに、3日かかるんだもん」

「そりゃ建築に使える木材が隣山にあるからの」


 転移門ゲートがあるとはいえ、隣山へいく→木材を切る→持って帰る、という3つの行程が必要となる。


「なんとか手早く、ぱぱっと木材を集める方法はないかな」


 困ったときは全知全能インターネット


「いくよ、眷属ちゃんたち。皆はお留守番ね」


 私は転移門ゲートへと向かうのだけど……。


「あの……皆さん?」


 振り返るともふもふたち全員が、私の後ろにいた。


「お留守番。意味分かる」

「ばう?」「わう?」「みー?」『赤ちゃんだからわからないのねっ』


 まったくもー。


「ふぶき、皆の面倒おねがいね」

「わし一人でこの人数を!?」


 フェンリル3匹。

 四神3匹。合計6匹。


「うん、任せた」


 ふぶきには調教テイマーのスキルがあるので、もふもふたちの面倒を見るのに最適なのだ。


『わたくしはミカさまの近衛として、ついて参りますっ』

「わたしは楽しそうだから、ミカちゃんについてこーっと♡」


 ということで、子ども達をふぶきに預けて、私たちは隣山へと移動。


「それで、ミカちゃん。何をするの?」

「まずは普通に木を切ってもらう。だんしゃくん、よろしく」


 開拓スキルを持っているだんしゃくん。

 手に持っていた小さな斧(神鎚で作っためちゃすご斧)で、木材を一刀両断。


 ずばんっ!

 ずずぅうん……。


「まあ、すごいわ。こんな小さいのに、おっきな木を切り倒しちゃうなんて」


 黒姫くろひめがしゃがみこんで、だんしゃくんの頭を撫でる。

 だんしゃくんは頬を指でかいて照れていた。


『わたくしが、木を運びましょうか』

「ううん、大丈夫。見てて」


 私は手を前に出す。


ボックス、オープン」


 ぼんっ、と私の目の前に、黒い箱が出現する。

 神格があがり、上級神となったことで手に入れた強化アイテムボックス。


「収納」


 倒した木が光り輝くと、箱の中に吸い込まれていった。


『木をアイテムボックスに収納したのですか?』

「そう。んで、次はこうする。ボックス、分割」


 空中にもう一個、ボックスが出現する。


「アイテムボックスが2つに増えた? そんなことができるなんて」

「普通のアイテムボックスじゃできないよ」


 ボックスの1つをだんしゃくんに渡す。

 彼(?)の頭に、ボックスがくっついた。


 私のは仕舞う。


「よし、だんしゃくん、それで木を切って」


 こくんとうなずくと、だんしゃくんが木を切る。

 すると、ぱぁ……と光り輝いて、木が中に吸い込まれた。


「アイテムボックスに木が収納された? ミカちゃんのボックスは仕舞ってるのに」

ボックスをこんな風に、貸し出すことができるみたい」


 私はボックスを再び出現させる。

 で、仕舞った木を取り出す。


 二本、どさっと。


「なるほど……。ボックス2つに分割したとしても、中身は共有されるのねっ!」


「そう、だからボックスを分割して眷属たちに貸し与え、あとはガンガン木を切ってもらう。こうすれば、持ち帰る手間がスキップできる」


「それにサツマくんにもボックスを与えて使えるようにすれば、ミカちゃんがボックスから木材を出す手間も省けると」


 黒姫くろひめが感心したようにつぶやく。


「すごいわ……アイテムボックスに、こんな使い方ができるだなんて……」

『どうですかっ、ミカさまは凄いのですっ!』

 

 えっへん、とフェルマァが胸を張る。


「フェルマァ、今の説明理解してる?」

『さっぱりわかりませんでした!』


 嫌いじゃないよ、フェルマァのそういうアホっぽいところ。


「じゃ、だんしゃくん、あとはよろしく。ガンガン木を切ってって」

「…………」びしっ!


 ボックスを与えられただんしゃくんが、他の眷属達とともに木を切り出す。


「さて……と」


 全知全能インターネットで必要となる日数を計算させる。


「3時間で完成か……」

「必要時間が、3日から3時間に短縮したってこと?」


「そゆこと。じゃ、帰ろっか」


 私は黒姫くろひめを連れてログハウスに転移。


「ばうばうー!」「わうー!」


 ふぇる太たちが私に飛びついてきた。

 もふもふたちに押し倒され、もふもふもふもふされる。


「ぜえ……はあ……疲れたのじゃあ……」


 ぺたん、とふぶきがその場に崩れ落ちる。


「ごめんねふぶき。大変そう?」

「いやまあ……日増しに子ども達のパワーが増えてきての。世話をするのも骨が折れるのじゃ」


 そろそろふぶき一人じゃ無理そうになってきたみたい。


「家も大きくするし、シッターを新たに雇おうかな」

「早急になんとかして欲しいのじゃぁ……」


 とはいえ当てがあるわけじゃあない。


「どうするかなぁ……」


 人を雇う?

 でもうちの特殊な家庭環境に、適応できる人材って……中々見つからない気がする。

 

 現地人は無理。

 駄女神……だめだ。駄女神だし。


 モリガンは天界で忙しく働いてるし……うーん……。


 人材を欲しい時って、どうしてるんだろう。

 ネットで求人出すとか?


「いや、全知全能インターネットに求人サイトなんて……」


 全知全能インターネットで求人と調べた。


「あった。神様用の求人サイト」


 全知全能インターネットに載っていたサイトから、アプリをダウンロードした。


「ええと、【こんちにワーク】?」


 ハロ●ワークのパクリだった。


「欲しい人材の条件を打ち込むことで、そのものに神託が下る。神託を受けた人が求人者のもとに来るかは本人次第……か」


 とりあえずやってみよう。


【赤ちゃんの面倒を見てくれる人】

【子ども好きだとなおよし】

【住むところ、食事あります】

【業務内容を漏らさない人】

【野心のない人】


「……っと。あと【急募】っと」


 検索中になった。

 あとはほっとこう。


 ややあって。

 さつまくんがやってきた。


 びしっ、と指さす先には、2つめのログハウスができあがっていた。


『さすがミカさまの眷属ですっ。みな主に似て、有能ですねっ!』


 こうしてログハウスが驚くべき早さで完成したのだった。


「さ。2号館に入ってみるよー」


 ということで子ども達を連れて二号館へ。


「おお、広い」


 入ってすぐ談話スペースがあった。


「床、あったかっ。まさかこれ……床暖房!」


 作り方は統括のトマト君が調べ、必要となる物はKAmizonで買っておいてくれたらしい。


「わふぅうん……」「わうぅうん……」

 

 子ども達が床に寝転ぶ。わかる、床暖房気持ちいいよね。

 

「トイレこっちにもつけたのね。助かるわ」


 あと運動場もあった。

 これで雨の日も子ども達が遊べる。


 あとは客用の寝室もできていた。


「注文通り。ありがとうね、みんな」


 野菜眷属達が、飛び跳ねたり、お互いにハイタッチしたりしてるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る