第33話 白虎を名付けて進化させる

33.


~~~~~~

名前未設定

【種族】白虎(幼体)

【レベル】1

~~~~~~


 ……どうやら私が治療した白い子猫は、四神が一柱、白虎の子供だったらしい。


「にぃ……にぃ……」


 白虎の赤ちゃんは、現在、フェルマァのお乳を元気に飲んでいる。

 フェルマァに頼んだら、喜んで乳母役を引き受けてくれたのだ。


 赤ちゃんはご飯を食べ終えると……


「にぃー!」


 白虎の赤ちゃんがぐずりだした。


『どうやらミカさまに抱っこして欲しいみたいです』


 何で私……?

 フェルマァがそばにいるのに。


「にーーーー!」

「はいはい、わかったわかった。泣かないの」


 可哀想だったので、私は抱っこしてあげることにした。

 白虎の赤ちゃんは安心しきったように丸くなる。


「ばうばうっ」「わうー!」


 元気っこのふぇる太&ふぇる子がすぐに子白虎ちゃんに興味を示す。

 ベロベロ、と舐めている。

 

 いきなり知らない人に見られて、怖がらないかな。


「にー……」

 

 戸惑って居るも、しかし嫌がってる様子はない。

 お互いに匂いを嗅ぎ合ってる。

 仲良しさんでよかった。


「ミカ。このたびは我が眷属の子の命を助けてくれたこと、感謝申し上げます」


 モリガンがスッ、と頭を下げてくる。


「気にしないで。私もふもふ大好きだし。それに友達の頼みだからね」


 モリガンは嬉しそうに笑うも、首を振っていう。


「白虎の子を助けてくれた、お礼をしたいです」

「お礼? いや別にいいよ」


「いいえ、神獣の1匹の命を救ってもらっておいて、何もお返ししないのは無礼に当たります。どうか」


 本当に別に良いんだけど。

 でも断るとそれはそれでモリガンに恥をかかせることになるし。


「わかった、ありがと」

「では、ミカ。スマホを出してください」


 私が片手でスマホを差し出す。

 モリガンがスマホに手をかざす。


 彼女の手からキラキラと光の粒子が出て、スマホの中に吸い込まれていった。


「神アプリを追加しました。【Gビューイング】というアプリです」

「Gビューイング……?」


 試しに開いてみる。

 

「地図アプリ?」


 G●●gleマップみちな、周辺の地図が表示された。

 だが、デフォルメされた地図ではなくて、リアルな地形が描写されている。

 

 ……いや、待てよ。

 私は指で画面を大きくする。


 そこには、私とモリガンなどが映っているではないか。


「まさか……空から見たリアルタイム映像を、スマホで表示できるの?」

「そのとおりです」


「確かに。便利ねこのアプリ。ありがと。こないだの神鎚ミョルニルといい、たくさん便利なものもらって申し訳ないわ」

「いえいいのですっ。ミカが喜んでくれるならっ」


 弾んだ声でモリガンが言う。

 しかしいつも貰ってばっかりじゃ申し訳ないな。


「トマト君、果物をいくつかとってお土産にフルーツ詰め合わせ作ってっくれない?」

「…………」びしっ!


 モリガンの持ってきたバスケットを受け取って、トマト君が離れていく。

 ほどなくして、バスケットにこんもりとフルーツを詰め合わせて帰ってきた。


「な、なんですか、この美味しそうなフルーツは……?」

「地球産のフルーツ」


「!? あ、ああ、なるほど、KAmizonで買ったのですね?」

「いや、ここで栽培してるの」

「!?!?!?!?!?」


 モリガンがめちゃくちゃ驚いていた。

 まあ、気持ちは理解できる。


「こ、ここは異世界です……土壌も気候も地球とは異なる……。なのに、どうして地球産のフルーツが?」

「さぁ? 朱羽の炎で作った灰を使ったら、なんかできた」


「!? ちょ、ちょっと見せてくださいっ!」


 私は聖灰を見せてあげる。


「これは……なるほど。朱雀すざくの炎が持つ浄化の力が、これには凝縮されているようです。世界最高の浄化魔法に匹敵するほどの、清めの力です」


「え、そんなに凄いんだ……」


 まあ道具のランクがextraの時点で、けっこー凄いものだとは思っていたけど。

 まさか世界最高峰の浄化力を持つとは。


「ミカは神である私の想像をいつも超えてきますね」

「まあ、暇で考える時間はたっぷりあるからさ。ほら、フルーツおたべ」

「はいっ、いただきますっ」


 モリガンがイチゴをぱくっと一口。


「ん~~~~~~♡ うまいですっ! こんなに美味しいイチゴは初めてですっ!」


 異世界の神様だからか、地球のフルーツを食べたのは初めてだったんだろう。

 モリガンはパクパクパク、と夢中でイチゴを頬張っていた。


『うぅ~……』


 フェルマァがそばまでやってくる。


「なぁに?」

『ミカさま……その女とばかりおしゃべりしてっ。ずるいです!』


「ああ、ごめん。別に君をないがしろにしてるわけじゃあないから。相手はお客さんだから」

『ふふんっ。聞きましたか、女神。あなたはお客さん! ですって! わたくしたち仲間かぞくと違って!』


 むっ、とモリガンが顔をしかめる。

 どや顔のフェルマァ。


「ケンカしないの」


 フルーツに大満足したモリガン。


「では、帰りますね」

「はいよ」


 私は白虎ちゃんを差し出す。

 元々モリガンが連れてきたものだからね、お母さんのところへ、返さないと。


「にー!」

「わっ、なに?」


 赤ちゃん白虎が私の指にしがみついている。

「どうしたの? 帰る時間だよ」

「にー! にー! に~~~~~~~~~~~~!」


 ぶんぶん、と赤ちゃん白虎が首を振る。


『まみー、その子、【かえりたくない】って』


 頭の上から、朱羽が言う。

 帰りたくないって……。


「お母さんが待ってるよ?」

『【ここがいい、ここがすき……おねえちゃん……すきだから……】って』


 どうやら、赤ちゃん白虎に好かれてるようだ。

 私何か好かれるとしたっけ?


 命を救ったくらいしかしてないような。


「それで好きになるのには十分でしょう」

『ですねっ。ミカさまの慈悲に感激し、浸水してしまう気持ちは理解できます』


 ふっ……とモリガンとフェルマァが笑い合ってる。

 あれ君らさっきまでケンカしてなかった?


 なんか急に意気投合してない?


「しかしどうしよう……この子、帰りたくないってさ」

「なら、その子をミカに預けます」


「赤ちゃん白虎を? え、いいの?」

「ええ、ミカさえよければですが」


 赤ちゃん白虎が私を見て、うるうるとした目を向けてくる。

 う……かわいい。


 どうやら私、この子に相当気に入られてしまったみたいだ。

 無理に返そうとしたら泣いてしまうだろう。

 こんな可愛い白猫を泣かせたくない……。


「ばう~……」「わう~……」


 ふぇる太&ふぇる子がこちらに潤んだ目を向けてくる。

 どうやらこの子達も白猫ちゃんを気に入ったようだ。


『まみー。ともだちかえっちゃうの?』


 朱羽にも四神のともだちがいた方が良いだろうし、うん。


「じゃ、預かるよ」

「みー!」「ばう!」「わう!」「…………!」『やったー!』


 魔物の子供達が、そろってぴょんぴょんしてる。

 新しい友達の加入を祝福してるようだ。


「みっ、みー!」 


 白猫ちゃんがうれしそうに鳴いてる。ふふ……。


「となると、名前が必要だね」


 白い猫だから……ううん。


白猫はくびょう。今日から君は白猫はくびょうちゃんだ」


 その瞬間……。

 パァア……! と赤ちゃん白虎こと白猫はくびょうが輝き出す。


 今まで痩せ細って、ちっこかったその子が……。


「にー!」

「おお、一回り大きくなった」


 ふわふわもちもちの健康ボディになった。

 毛皮に縞模様が浮かんでいる。


~~~~~~

白猫はくびょう

【種族】白虎(子供)

【レベル】150

~~~~~~


 そして当然のようにレベル3桁……。

 まあ神獣の赤ちゃんだから、レベル高いのかも。朱羽も同じ感じだったし。

 

「すごいです、ミカ……」


 全知全能インターネットで調べた、白猫はくびょうのステータスを閲覧して、モリガンがまたも驚く。


「神獣も、魔物同様にレベル1から徐々にレベルが増えていきます」


 神獣はちょーすごい魔物。つまり、彼ら同様に1ずつレベルが上がっていくのが普通らしい。


「それに、神獣は他魔物より、レベルアップに時間がかかるのです」

「え、そうなんだ」


「はい。成長に必要な経験や魔力量が、他魔物より多いのです」


 ポケ●ンのドラゴンタイプみたいなものか……。

 あれ?


「じゃあ、レベル付けただけでレベルが150倍になったのって……もしかして……」

「はい、そんなの普通はあり得ないことです」


 そ、そうだったんだ……。

 フェルマァもふぶきも、名付けて一気にレベル上がったし。


 てっきり名付けってレベルを一気に上げる儀式だと思ってた。

 けど、実はそんなことありえなかったらしい……。


「ミカは、もしかしたら次の最高神になるために、生まれてきたのかもしれませんね」

「最高神……あんたら神のトップだっけ?」


「はい。ミカは最高神になれる器があります。きっと最高神さまがあなたを知ったら、興味を持つことでしょう」


「うぇ、マジ……。絶対に言わないでね」


 絶対に厄介なことになりそうだし。


「はい、わかりました。最高神さまには黙っておきます。絶対に他言しません」

「絶対だよ? 約束だよ?」


 何はともあれ、こうしてうちに、新しいもふもふ、白虎の白猫はくびょうが加わったのだった。

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