山暮らし聖女の異世界スローライフ〜聖女召喚された私、偽物だとして雪山に廃棄されるも、チートスキル【インターネット】と神の力で快適に暮らしてる。今更私が真の聖女だと気付いたようですがもう遅い

茨木野

第1話 聖女、追放される

 私、【長野ながの 美香みか】が【聖女召還】でこの国、ゲータ・ニィガ王国へと呼び出されてから、3年が経ったある日。


「偽物の聖女ナガノ・ミカ! 貴様をこの国から追放する! 即刻出て行くがいい!」


 場所は、ゲータ・ニィガ王国王都、レーシック城の中。

 この国の王子、【オロカニクソ=フォン=ゲータ・ニィガ】が、私に追放を宣言してきたのだ。


「私を、追放……? どういうことですか? オロカニクソ様? 理由をお聞かせ願いたいです」

「簡単な理由だ、ナガノ・ミカ。貴様は、我が婚約者であり、真の聖女でもある、聖女コゴミを虐めていただろう?」


 オロカニクソの隣には、ショートカットの、20の若い女が立っている。

 ふわふわとした髪質のショートカット。

 胸はバカみたいにデカい。


 顔は……まあまあ整っている。

 彼女は【木曽川キソガワ こごみ】。


 三年前の聖女召還の儀式において、私と一緒に、異世界から召還された女だ。


「こごみさんを私が虐めたことなんてないんですが……」


 虐めるもなにも、召還されてからこごみとほとんど交流なかったような……。


「美香さんは嘘ついてるんですぅ。あたしが若くてぇ、美人でぇ、聖女としての才能にあふれてるからってぇ、妬んでるんですよぉ。そのせいでぇ、毎日いじめられてぇ」


 確かに私は29(召還時は26)で、こごみは二十歳。

 でも別にこごみの若さや才能に対して妬んだことはない。


「偽物の聖女ナガノ・ミカよ。貴様がコゴミをいじめていたのは事実であるな?」

「いや事実じゃ無いんですが……。こごみが勝手に言ってるだけです……」


「ふん! 嘘をつくな。貴様がコゴミに嫉妬してるのは事実だろう? なにせ、コゴミには【聖女】のスキルが発現してるに対して、貴様はなんだ? いたー、い、いたーね」


「【インターネット】?」

「そうそれ!【インターネット】とかいう外れスキル持ちなのだからな!」


 聖女召還の儀式。

 文字通り、異世界から聖女を呼び出す儀式だ。


 呼び出された際に、召還された聖女には、固有のスキルが与えられる。

 スキルっていうのは、あれだ、ネット小説でよく見る、特殊技能のこと。


 呼び出されてすぐ、魔道具マジックアイテム(魔法が付与された道具)で、私達はスキルを鑑定された。

 結果、こごみには【聖女】。


 そして私には、【インターネット】というスキルがあることが判明したのだ。


 聖女スキル持ち、そして、若く美しいということから、この国……というか王太子であるオロカニクソは、こごみを真の聖女として認めた。


 一方、聖女スキルのない私は、こごみのオマケとして召還された【偽物の聖女】として、この国の連中から呼ばれるようになったのだ。


 ……とはいえ、だ。


「言葉ですが、オロカニクソ様。私を追放しますと大変なことになりますよ?」

「大変なこと?」


「ええ。だって、この国の街や村を守る結界は、私が張っていたのですから」


 こごみはこちらに召還されてから今日まで、聖女としてのお役目を一度もこなしてこなかったのだ。

 めんどくさい、おばさんやっといて、と全部私に丸投げされていた。


「ふん! 嘘をつくな。聖女スキルのない貴様が、どうやって結界を張っていたのだ?」


 聖女のスキル(治癒や結界を張る力のことなんだって)のない私に、通常の結界は張れない。


「確かに、私の持つ【インターネット】に、結界を作る力はないです」

「ほらみろ!」


「ですが、私が結界を張り、維持していたのは事実でございます」


 聖女スキルがあれば、念じるだけで楽々結界が張れるらしい。

 私にその力は確かにない。


 だが、別の方法で私は結界を構築していたのだ……。


「誰が信じられるか、そんなこと」

「ほんとですよねぇ。ねえおばさん、まさか【インターネット】で結界の張り方を調べたとかいうんですかぁ?」


 こごみのやつが、本性をあらわにしてきたぞ……。


「ええ、そうですよ」

「あはは! ばっかみたい! いくらいろんな情報がネットに載ってるからって、結界の張り方が書いてるわけないじゃないの!」


 これが書いてあるんだよなぁ……。


「とにかく! コゴミが召還されてからこの3年間、聖女としてのお役目を頑張ってたというのに、その手柄を自分のものであると嘘をついていたのは事実!」


 いや嘘じゃ無くて事実なんですけど……。

 こごみはマジ何もしてなかったんですけど、こっちに来てから……。


 というか、それが虐め認定されちゃうの?

 手柄を横取りされたことが?


 横取るもなにも、最初から私がやってきたことじゃないか。


「オロカニクソ=フォン=ゲータ・ニィガが命じる! 真の聖女こごみをいじめた罪で、偽物の聖女ナガノ・ミカは国外追放とする!」

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