再会
第1話
休日、昼下がり
俺はぶらりと大型デパートの中をのんびり歩いていた
特に欲しいものがあったわけでもなく、ただの暇つぶしだ
良さそうな服がないか、カッコいい靴はないか、なんとなくで目に付いた店に入って商品を物色して、またふらりと違う店へ
何の意味も理由もない散策は、俺の趣味だ
がやがや、ザワザワ
周りの喧騒をのんびり眺め、マイペースに歩く
少し疲れたら飲み物買ってベンチに座って人間観察
友人からは、それの何が楽しいのかさっぱりわからないと言われるが、俺にはこれが最高の暇つぶしなのだ
さて、そろそろ疲れてきたから自販機で何かジュースでも買って飲もう
今日は何が良いかな?
コーヒー?
炭酸?
紅茶?
100%オレンジ?
指を自販機のボタンの前でうろつかせながら今日の気分で選ぶ
今日は100%オレンジ!
出てきたペットボトルを取ってベンチに向かおうと振り向いたら、通行人にあたってしまった
「わ、ぁ
す、すいませ……ん」
とっさに出てきた謝罪の言葉が途中で突っかかり、止まる
俺の目の前には、懐かしい顔があった
「お前……あきら?」
「………ひで、ちゃん…」
懐かしく、苦い思い出がよみがえる
だが相手は、秀ちゃんはそんなこと知らずに楽しげに口を開く
「やっぱりあきらだ!
久しぶりだなぁ、お前とずっと会えてなかったもんな」
「久しぶり、秀ちゃん
…もう、5年くらい経つのかなぁ?」
「中学の卒業式以来だもんな!
懐かしー!!
あ、あきらはまだ100%オレンジにはまってるのか?」
楽しそうな秀ちゃんは俺の手元の100%オレンジを見てそう言う
確かに、中学生の頃は100%オレンジをよく飲んでいた
懐かしい
「ううん、今日はたまたまそんな気分だっただけ」
「気分って…
気分屋なのは相変わらずなのな」
そう言って笑う秀ちゃん
ちらりと見える八重歯に、俺の胸はズクリと痛む
「そーかな?」
適当に言葉を返し、俺はベンチへと向かう
その後ろに秀ちゃんがついて来て、俺の隣に座る
「秀ちゃんは変わったね
さらに、かっこよくなった…」
「お、だろだろ~?
俺カッコいいもんね!」
意志の強そうな少し太めの眉に、釣り上がり気味のアーモンドアイ
通った鼻筋に、薄めの唇
短く切りそろえられている明るめの髪
二十歳になり、垢抜けた秀ちゃんに心臓が暴れそうになる
だから、秀ちゃんには会いたくなかった
「今日は何買いに来たの?」
「ん~、彼女の誕プレー
もーすぐ彼女が誕生日だからさー、なんか良いのないかなーて思って」
彼女という単語にはにかみながら秀ちゃんが楽しそうに応える
あぁ、聞かなければ良かった
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