第60話

不安で 不安で何も話せなかった充


不安になればなる程充からは話し掛け難くなり、不安に押し潰されそうになる




奏《………ねぇ

君の本当の名前、教えてくれる?》


充《……ぇ?》


奏《君の本当の名前


オレはまだ、君の事は何も知らない


だから……


今更過ぎるかもしれないけど、名前 教えて?》




奏くんの優しい声に、充はまた泣きそうになる


が、涙を堪え 言葉を紡ぐ




充《………ぉ、オレ、は……


充……


稲葉 充…》


奏《稲葉 充か……


そっか…》

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