大切なヒト ＊更新遅延気味

第34話

ジェラルドやルーカス、他のギャラリーも驚いていたが、

ルーカスは他の誰よりも早く我に返り、マイペースにあっさり決闘の始めの合図を出した

ジェラルドはそれに呆気にとられていたが始めの合図で持っていた闘技場の武器、刃引きされた槍を構える

が、ティオナットには遅すぎた

ジェラルドが槍を構えた時には５m程あった距離はもう無く、ティオナットが闘技場の武器、刃引きされた剣をジェラルドの首元へ突き付けていた

皆が一様にそれに驚く

特にその感情が大きいのは首元に剣を突き付けられている当人、ジェラルドだ

ジェラルドは、驚きと小さな恐怖に目を見開いていた

ティオナットはそれに一切関心を見せず、そのままルーカスを見遣る

ルーカスはそれにハッとし、勝者を宣言する

「………し、勝者、ティオナット･ブリクスト!

ブリクスト、お前のラングフォードへの望みは？」

「望みか……

そうだな、―――」

「ち、ちょっと待て!!」

ルーカスに望みを問われ、応え様としたところでジェラルドが吠えた

ティオナットはジェラルドの首元に剣を突き付けたまま、彼を見る

ギャラリーやルーカスもジェラルドへと視線を動かす

「ぉ、おかしいだろ!!

あの距離をホンの数秒で移動出来るわけがないんだ!

お前、身体強化の魔法使ったんだろ!?」

そう喚くジェラルドをティオナットは冷たい瞳で射ぬく

「身体強化など使っていない

純粋な俺の身体能力のみで移動したが？

しかも、もし俺が身体強化使っていたらルーカスが気付いているし、それを指摘して俺の反則負けになっているはずだが…？」

そう言って視線をルーカスに戻すティオナット

因みに、身体強化とは全身に魔力を均等に素早く廻して、身体能力を一時的大幅に上げる魔法だ

「…ラングフォード、ブリクストの言った通りブリクストは身体強化していなかった

ブリクストからは一切の魔力上昇を見られなかったしな…

だからブリクストは魔法を使ってねーから反則負けにならねぇ

そして今もお前の首元に突き付けてある剣、どーにも出来なかったろ

お前の負けだ」

ルーカスは静かにジェラルドの敗北宣言をした

ジェラルドは何も反論出来ず、唇を噛んで顔を俯けた