再開
第1話
放課後、いつも通り教室で駄べりながら時間を潰していたが、不意に会話が途切れた
何となくそんな時間も好きな俺は特に気にしてなかったが、潤は紅く色っぽいと言われるその舌で唇を濡らし、喉を震わせた
「……俺さ、お前のこと、好きなんだ…」
突然の告白じみた言葉に、俺は一瞬たじろぐ
が、いつも通り笑って返す
「え?
俺もお前、好きだよ
もー何年の付き合いだと思ってんだよ!
嫌いならこんなに長く一緒になんて居られねーよ」
笑って返す俺とは反対に、潤は視線をさまよわせつつ、言葉を絞り出す
「……いや、そうじゃなくてさ…
俺、幼なじみとしてじゃなくて、恋愛感情として、お前のこと好きなんだ…」
「は……?」
いつものお喋りと違って、真面目な潤の言葉に俺の思考は止まる
恋愛感情……?
「……大輔が、俺のことそういう意味で思ってくれてないって知ってるけど、でも…
少しでも俺のこと意識して欲しくて…」
「え……
いやいやいや!
男同士なんて、フツーじゃねーだろ」
今までのこの居心地の良い幼なじみという距離感がなくなるのが嫌で、俺はつい潤の言葉を遮る様に捲し立ててしまった
潤の言葉を遮るついでに目線を逸らしてしまったせいで、潤の表情は伺えなかった
……お願いだから、ただの冗談だって言ってくれよ…
そんな、祈りにも似た感情を胸に抱きながら、潤の言葉を待つ
それが、何よりも永く感じた
が、永く感じた沈黙は潤が破ってくれた
「………そうだよな…
悪い、忘れてくれ…」
そう言って潤は自分の鞄をひったくる様に取って、教室を出て行ってしまった
教室に1人残された俺は、何も出来ずそこに居座ることしか出来なかった…
ピピピピピピ ピピピピピピ
無機質な機械音で、俺は目を覚ます
懐かしい、夢を見た
夢と言ってもさっきのあれは高校時代、実際にあったことなのだけれども
「……あぁ、いてぇ…」
酒を多めに飲んだ夜は、必ずと言っていいほど、さっきの夢を見る
二日酔いのせいで頭だけじゃなく、胸まで痛む気がするが、きっと気のせいだ
今日は大事なプレゼンの日だ
夢の、過去のことなどさっさと忘れて準備をしなければ…
ベッドから起き上がり、テレビを付けてニュースで今日の天気予報チェック
それが終わったら洗面所に行って口をゆすいで顔を洗い、歯を磨く
歯を磨きながら、今日のスーツに着替える
俺なりの朝の時短方法だ
着替えと歯磨きが終わったらパンをレンジにセットして、焼きあがるまでに軽く髪をブローする
社会人の、しかも営業マンには見た目も重要になるからな
寝ぐせはこの時討伐すべし
髪のブローを終えるとパンも焼きあがっているからそれにマーガリンを塗って、ニュースを見ながら食べる
コーヒーもここには必須である
時事ネタを頭の中に叩き込みつつ、女性キャスターが今日も可愛いとほんわかする
そう、俺は女の子が恋愛対象なのだ
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