第36話

ティオナットはジェラルドの方へ突き出した右手の人差し指と中指以外の指を折り畳んで見せる


所謂ピースサインだ


ジェラルドは思いっきり今の状況を愉しんでいるティオナットを忌々し気に睨む


そして吐き捨てる様に言葉を紡ぐ




「………っ


……ふんっ、貴族のこの僕が忌み子のお前なんかと友達になってやるよ」


「え?


退学になりたいって?」




ティオナットは馬鹿にしまくった顔で耳に手をあて、聞こえないなぁー などとほざく


なかなかに意地が悪い


ジェラルドはそれに顔を真っ赤にして怒鳴り散らそうとするが、そこはなけなしの理性をかき集めて踏み止まる




「やっぱり人に物事を頼む時はそれなりの言葉と態度がなきゃあ、聞いてあげたくないよねー?」




にっこにこのティオナットと相反して、ジェラルドはキレる寸前だ


因みにルーカスはもう我関せず といった体(テイ)で、このやりとりが終わるのをぼんやり空を眺めて待っている




「……………………………………………………………………………………………………………………………………くっ!!


……………僕と友達になって下さい、ブリクスト」


「ぶっ!!


っくくくく、あぁ、良いよ


俺がお前と友達になってやる」




とても心の中で葛藤したのであろうジェラルドの “お願い”


それを見て、吹き出しつつもあっさり上から目線でOKしたティオナット


それが尚更ジェラルドの自尊心やプライドを深く傷付けているのを理解していながらそうするのだから質が悪い


が、これはティオナットの自衛本能から助長し、酷くなった結果 とも言える


ティオナットは忌み子であるというだけで、小さい頃から蔑まれ、疎まれ、見下されて生きてきたのだ


小さい頃は解らなかったが、ある時に我慢しきれず力と言葉で捩じ伏せた事があった


その頃は今程のやり方ではないが、それ以来そいつからは蔑まれたりなどが一切なくなった


そのことで味を占めたティオナットはそれ以来、こうやって対応する様になったのだ




「………あー、ブリクストの望みも聞き入れられたし、これで終わりで良いか?」




空からやっと視線と思考をこちらに戻したルーカスは尋ねる


それにティオナットとジェラルドは(渋々だったが)頷いたので、ルーカスはまた口を開く




「じゃぁ、これにてブリクストとラングフォードの決闘は終了とする、互いに礼


んじゃ、解散」




それだけ雑に言い残してルーカスは早々と去って行った

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