第32話

ティオナットはその歓声すらも知らないフリで本の新しいページを捲る


その後、授業が終わるまで煩いフレッドをシカトしてずっと本を読んでいた


そしてその間はずっと魔力ボールがティオナットの周りをくるくる回っていた


ティオナットはこの時間、ずっと魔力ボールを出していたことになるが、ルーカスへの報告はしていない


授業終了のチャイムと同時に起きるルーカスにまた呆れながらそれと同時にティオナットは魔力ボールを消した


委員長らしき生徒の号令の後、ティオナットはルーカスに呼ばれた




「……あ、そーいえばブリクスト


ブリクストはちょっと俺んところ来ーい」


「………何?」




少しルーカスに近寄り、面倒くさそうに聞く


ティオナット本人には、ルーカスに呼び出される謂れはないはずなのだが…




「お前、さっき魔力ボール10分以上持ってたろ


なんで俺に言いに来ねぇんだ?」


「え?


だって寝てたじゃん」




なんだ、そんな事… と思いながら答えると、何故かため息を吐かれた


訝しみながら身長差故にルーカスを見上げる




「……あのなぁ、俺は授業が始まった時に10分持った奴は俺んところ来いって言ったはずなんだが…


お前聞いてなかったのか?」


「聞いてはいた


だが、ルーカスはそのまま寝ていただろうし、言わずとも気づいていると思っていたからな」




あっけらかんとそう言い放つと、今度は深いため息を吐いたルーカス


ティオナットは別に呆れられるような事を口走ったつもりなどないのだがと訝しむ


そんなティオナットにルーカスは頭に手を当てる


頭痛がしているようだ、寝すぎかな?




「……それは信頼されていると思えば良いのか、呆れられていると思えば良いのか判断に困る言われ方だな…」


「…あぁ、そんな事か


そんなの、両方に決まっているだろう


ルーカスの実力など能力面で言えば信頼出来るが、その性格や職務態度に呆れている」




ルーカスについて思っていることをズバリ言い切ると、言われた本人は何とも渋い顔をした




「お前、それ本人の目の前で言うか?」


「言われる様な事をするルーカスが悪いと思うのは俺だけか?」


「お前だけだよ馬鹿野郎」




それだけ言い捨ててルーカスはティオナットへ背を向けた


その背中にティオナットは言葉を投げつける




「バカはフレッドだと思うが」


「…違いない」


「ちょっと待って!


なんで俺が貶されないといけないの!?」




本当の事を言うとルーカスは肯定し、さっきまで静かだったフレッドは喚き始める


だが、ティオナットにそれをぶった切られる




「あー、はいはい


次の授業遅れるから早く行こうなー」

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