誕生
第4話
立派な洋風なお屋敷にて
恰幅の良いおじさんがとある扉の前でウロウロしていた
その額には汗が滲み、その所為で前髪は額に張り付いていた
おじさんの横に居た、こちらはスマートに燕尾服を着こなした青年は、扉からは目を逸らさず口を開いた
「……旦那様、余り緊張してそわそわしないでくださいませ
奥様は向こう側でメイドと一緒に頑張っておいでです
そんな事では奥様とメイドに笑われてしまいますよ」
丁寧な口調は壊さずにそう窘める青年
旦那様はそれに苦い顔をしながらも足を止める
「う…うむ……
だ、だが、どうしても落ち着かんのだ
今この瞬間にも私の息子か娘が生まれるのかと思うと…」
そこで旦那様の声は遮られた
赤子の産声によって
元気な赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる
それに男2人は数瞬動きが止まってそれから旦那様が騒ぎだした
「う……産まれたぁぁああああっ!!?」
万歳して騒ぐおじさん、基、旦那様
そして扉を大きく開けて中に入っていく
青年はそれに続いて静かに、だがその瞳は興奮冷めやらぬまま部屋の中へと入る
旦那様は自分の妻へと話しかける
「妻よ!
私達の子供は!?
男かっ?
それとも女かっ?」
「…あなた、ちょっとは静かにして下さい
………元気な男の子ですよ」
「そ、そうか!!
顔を見せてはくれんか!?」
妻に静かにするよう窘められたにもかかわらず旦那様は彼女を質問攻めにする
妻は一瞬目をそらし、迷いを見せた
その妻らしくない行動に旦那様は眉を顰め、不安を少しだけ表に出した
そして旦那様は産まれたばかりの我が息子の顔を見て、驚愕した
厳密に言えば 顔を ではないのだが
その息子のまだ少ない髪と小さく開いた目を見て驚愕したのだ
それの色は黒かった
この世界で目と髪が黒の人間は 忌み子 として恐れ、蔑まれるものだった
その 忌み子 が、由緒正しき貴族の家に産まれたのだ
それはあってはならない事だった
ただでさえ忌み子と言うだけで生き辛い世の中だと言うのに、それが貴族とあっては何があるか判らない
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